講演情報

[PPS04-P15]凍土層に形成した衝突クレーター周囲の衝突残留温度の計測

*大橋 拓磨1、保井 みなみ1、荒川 政彦1、大川 初音1、豊嶋 遥名1 (1.神戸大学)

キーワード:

クレーター、衝突

背景:
太陽系において、天体衝突は普遍的に起きる現象であり、衝突現象の物理的過程の理解は天体進化を解明する上で極めて重要である。ハビタブル環境の天体形成において、小惑星などの氷を含む天体が衝突を通じて水をもたらした過程の解明は惑星科学の重要な課題の一つである。近年の小惑星探査機はやぶさ2によるサンプルリターンにより、小惑星リュウグウの母天体ではかつて液体の水と鉱物が相互作用し、水質変成を起こしていた証拠が確認されており、水と熱の相互作用への関心は高まっている。また、火星においてもMROに搭載されたHiRISEによる観測から、地下の広範囲に永久凍土層が存在していることが確認されており、そのような天体への衝突現象は特徴的な地形を形成すると考えられる。その代表例は、「ランパートクレーター」であり、クレーター周囲に花びら状に堆積物が分布して盛り上がりを示す。この地形は、衝突エネルギーによる永久凍土層の融解が関与していると考えられるが、凍土層への衝突による残留熱の挙動や、クレーター形態に与える影響については、いまだに理解が不十分である。そこで本研究では、凍土層を標的とした衝突実験を行い、クレーター周囲の衝突残留温度を計測することで、衝突残留熱が及ぼすクレーター周囲への熱的影響を明らかにすることを目的とした。
実験手法:
凍土を模擬するため、100µmの石英砂と水を混合・凍結させることで凍結砂試料を作成した。内径140mm、外径150mm、深さ60mmのアクリル筒容器に湿った石英砂を充填し、その試料内部に治具を用いて熱電対を設置した。標的を詰めた容器をタッピングすることによって、衝突させる標的断面は水平に成形し、-20℃の環境下で凍結させた。温度計測のため、4本の太さ0.1mmのK型熱電対を試料内部に設置した。設置位置は、想定されるクレーター孔の外側になるよう、衝突点からの距離を変化させた。本実験では、標的の含水率0%から20%で変化させることで空隙率を0%から40%に変化させ、各試料で、衝突前後のクレーター周囲の温度変化をデータロガーにより100Hzのサンプリング間隔で記録した。また、凍土試料の表面に孔のあいたアルミ板を設置することで、擬似的に大きな重力を与えてクレーターの成長を孔径に抑制した実験も行った。この表面拘束実験では、自由表面標的ではエジェクタとして放出される高圧・高温度にさらされた破片が標的に残置することになり、衝突残留熱に対する重力の影響を調べることができる。衝突実験には神戸大学の横型二段式軽ガス銃を用い、衝突速度2~6km/sの速度で直径2mmのアルミ球弾丸を衝突させた。
結果:
衝突速度2km/sで乾燥砂標的に衝突させた際、衝突による温度上昇量が衝突点からの位置に依存することが観測された。観測された最大温度上昇量は、衝突点から離れるにつれ徐々に減少する様子が確認され、ピーク温度に達するまでの時間は衝突点からの距離が遠くなるにつれ遅くなる傾向であった。また、標的表面にアルミニウムを設置した場合、クレーター形成過程の掘削が制限され、深さ方向の成長がほとんど観測されなかった。標的に治具を設置した場合、自由標的表面への衝突に比べてクレーター壁面に高温物質が長く残留する傾向が見られた。