講演情報
[PPS04-P27]原始地球における天体衝突による大気加熱のモンテカルロシミュレーション
*名和 樹生1、木村 智樹1、吉田 辰哉2、寺田 直樹3 (1.東京理科大学、2.東京科学大学、3.東北大学)
キーワード:
大気、天体衝突、地球
原始惑星系円盤における微惑星の衝突・集積過程を経て地球が形成され、その質量が⽉や⽕星程度に達すると、 原始太陽系星雲ガスの捕集および地球内部からの脱ガスを通じて⼤気が形成される。集積の最終段階である約 45 億年前に起きた巨⼤衝突の後には、マグマオーシャンと⽔蒸気に富む⼤質量⼤気が形成される。 ⽔蒸気⼤気の進化は、 地球の⽔量に⼤きな影響を及ぼす(Hamano et al., 2017)。マグマオーシャン期の原始地球は、 現代の地球と⽐べて天体衝突がより頻繁に起こる環境にあったため、 ⽔蒸気⼤気に対する天体衝突による⼤気加熱とその変遷の解明は、 ⼤気進化を理解するうえで本質的な課題である。特に近年、マグマオーシャンが 1000 万年近く持続する可能性が⽰されている(Yoshida et al., 2025)が、この⻑期的な持続を前提に、 天体衝突が及ぼす影響を定量的に評価した研究は先例がない。 そのため、 天体衝突が原始地球の⼤気および⽔量の進化に及ぼした影響の全容は未解明である。
そこで本研究では、マグマオーシャン期の衝突天体のサイズ(Marchi et al., 2014)と頻度分布(Sakuraba et al., 2021)に基づき、原始地球に対して衝突した天体の直径と頻度をモンテカルロ法で統計的に扱うモデルを構築した。 さらに、 天体の⼤気突⼊過程におけるエネルギー減衰を記述する解析モデル(Collins et al., 2005)を組み込み、天体衝突が⼤気進化に及ぼす影響を定量的に評価した。⼤気には、Yoshida et al. (2025) により⽰されたマグマオーシャン期の⽔蒸気に富む⼤質量⼤気を⽤いた。モデル計算の結果、加熱率のピークを含む⾼度 0-200 km における頻発する⼩規模な衝突による累積的な⼤気加熱率は全球⼤気体積(~10^17 m^3)および Marchi et al. (2014)より仮定したマグマオーシャンの持続期間(~25 Myr)で平均をとると約 10^(-10) J m^(-3) s^(-1)にとどまることが明らかになった。これは、 同⾼度における太陽放射による⼤気加熱率 (約 10^(-7) J m^(-3) s^(-1))と⽐べて 3 桁⼩さい。 ⼀⽅、 単発の⼩天体衝突による⼤気突⼊時に衝突天体周辺で⽣じる局所的 ・ 瞬間的な加熱を、 衝突天体が通過した⼤気体積(~10^13 m^3)および衝突時間(~43 s)で平均すると、 加熱率は約 10^8 J m⁻³ s⁻¹に達し、 太陽放射による加熱を約 15 桁上回る。 このような局所的な加熱は、 ⼤気中の化学種を解離させ、 ⾮平衡な化学組成をもつ蒸気プルームを形成し、⼤気組成に顕著な影響を及ぼす可能性がある。
さらに、 上記と同⼀の衝突頻度・サイズを仮定し、 衝突による⼤気散逸量(Svetsov et al.,2000) や、衝突天体から供給される物質量(Broadley et al., 2022)に基づいて、⼤気中における⽔量の収⽀を評価した。その結果、 エンスタタイトコンドライトに代表される含
⽔量の少ない(~0.1 wt.%)衝突天体では散逸が供給を上回り惑星の⽔量は減少する⼀⽅、炭素質コンドライトに代表される含⽔量の多い(~10.0 wt.%)衝突天体では供給と散逸がバランスし⽔量が変化しないことが⽰された。ただし、 ⼩規模天体衝突による⽔収⽀の累積値は最⼤で約 10^15‒10^16 kg にとどまり、Yoshida et al. (2025)のマグマオーシャン期における惑星の全⽔量約 10^21‒10^22 kg と⽐べて 5‒6 桁⼩さい。したがって、マグマオーシャン期の頻発する⼩規模天体衝突はその組成によって⽔量を維持する場合も減少させる場合もあるが、 惑星全体の⽔量の進化に対する量的寄与は限定的であることがわかった。
これらの結果より、 頻発する⼩規模天体衝突が⽔蒸気⼤気の⻑期的な熱進化や惑星の⽔量進化にはほとんど寄与しない⼀⽅で、 瞬間的・局所的な⼤気加熱による化学組成の変化を通じて初期地球環境に影響を及ぼした可能性が⽰唆される。
そこで本研究では、マグマオーシャン期の衝突天体のサイズ(Marchi et al., 2014)と頻度分布(Sakuraba et al., 2021)に基づき、原始地球に対して衝突した天体の直径と頻度をモンテカルロ法で統計的に扱うモデルを構築した。 さらに、 天体の⼤気突⼊過程におけるエネルギー減衰を記述する解析モデル(Collins et al., 2005)を組み込み、天体衝突が⼤気進化に及ぼす影響を定量的に評価した。⼤気には、Yoshida et al. (2025) により⽰されたマグマオーシャン期の⽔蒸気に富む⼤質量⼤気を⽤いた。モデル計算の結果、加熱率のピークを含む⾼度 0-200 km における頻発する⼩規模な衝突による累積的な⼤気加熱率は全球⼤気体積(~10^17 m^3)および Marchi et al. (2014)より仮定したマグマオーシャンの持続期間(~25 Myr)で平均をとると約 10^(-10) J m^(-3) s^(-1)にとどまることが明らかになった。これは、 同⾼度における太陽放射による⼤気加熱率 (約 10^(-7) J m^(-3) s^(-1))と⽐べて 3 桁⼩さい。 ⼀⽅、 単発の⼩天体衝突による⼤気突⼊時に衝突天体周辺で⽣じる局所的 ・ 瞬間的な加熱を、 衝突天体が通過した⼤気体積(~10^13 m^3)および衝突時間(~43 s)で平均すると、 加熱率は約 10^8 J m⁻³ s⁻¹に達し、 太陽放射による加熱を約 15 桁上回る。 このような局所的な加熱は、 ⼤気中の化学種を解離させ、 ⾮平衡な化学組成をもつ蒸気プルームを形成し、⼤気組成に顕著な影響を及ぼす可能性がある。
さらに、 上記と同⼀の衝突頻度・サイズを仮定し、 衝突による⼤気散逸量(Svetsov et al.,2000) や、衝突天体から供給される物質量(Broadley et al., 2022)に基づいて、⼤気中における⽔量の収⽀を評価した。その結果、 エンスタタイトコンドライトに代表される含
⽔量の少ない(~0.1 wt.%)衝突天体では散逸が供給を上回り惑星の⽔量は減少する⼀⽅、炭素質コンドライトに代表される含⽔量の多い(~10.0 wt.%)衝突天体では供給と散逸がバランスし⽔量が変化しないことが⽰された。ただし、 ⼩規模天体衝突による⽔収⽀の累積値は最⼤で約 10^15‒10^16 kg にとどまり、Yoshida et al. (2025)のマグマオーシャン期における惑星の全⽔量約 10^21‒10^22 kg と⽐べて 5‒6 桁⼩さい。したがって、マグマオーシャン期の頻発する⼩規模天体衝突はその組成によって⽔量を維持する場合も減少させる場合もあるが、 惑星全体の⽔量の進化に対する量的寄与は限定的であることがわかった。
これらの結果より、 頻発する⼩規模天体衝突が⽔蒸気⼤気の⻑期的な熱進化や惑星の⽔量進化にはほとんど寄与しない⼀⽅で、 瞬間的・局所的な⼤気加熱による化学組成の変化を通じて初期地球環境に影響を及ぼした可能性が⽰唆される。
