講演情報

[PPS04-P31]焼結を経たダストアグリゲイトの中心星方向への落下

*瀬川 陽祐1、城野 信一1 (1.国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学)

キーワード:

微惑星、焼結、圧力バンプ

惑星のできる場所である原始惑星系円盤はガスと固体のダストが質量比100:1で構成されている。そのダストのサイズは0.1μmとされており、そこからkmサイズの微惑星、そして現在の姿の惑星が形成される。ダストは互いに衝突、合体することでアグリゲイトという不規則な集合体を形成する。最初アグリゲイトは付着合体で成長していくにつれて密度が下がっていき、より高空隙率な構造になっていくというシミュレーション結果が示されている(Kataoka et al. 2013)。
ここで焼結のプロセスとその効果に着目する。「焼結」は、固体粒子の集合体を加熱すると、粒子同士が結合しより緻密な構造になる現象を指す。中心星からの加熱により焼結が進むとネック成長、粒子成長が起き、アグリゲイト全体としては縮む。焼結が起きなければアグリゲイトは衝突で合体成長できるが、焼結の初期段階であるネックが成長するだけでアグリゲイトは硬くなり、アグリゲイト同士が衝突すると合体ではなく、跳ね返りが起きると考えられる。従って焼結を考えると、アグリゲイトは跳ね返りにより、合体成長はできないと考えられる。
そこで圧力バンプというダストが溜まる領域を考える。圧力バンプにダストが溜まり、そこではアグリゲイト同士の相対速度が小さいため、合体成長でき、その後ストリーミング不安定が起き微惑星が形成されるという流れである。隕石のエコンドライトとコンドライトの分析から、微惑星は円盤が誕生してから10万~数100万年で形成されたと推定されているが、アグリゲイトは空隙率が高いため、落下速度は遅く、ダストが圧力バンプに溜まるのが微惑星の形成年代に間に合わないと考えられる。しかし焼結がさらに進むと粒子は大きくなり、アグリゲイトは縮み、ガス抵抗が和らぐため、落下速度はより速くなる。これらを踏まえ、焼結を経験したアグリゲイトが圧力バンプにある程度の量が落下してくるまでの時間はどれくらいか、を本研究の目的とする。
計算条件として、ダストを落下させていき幅0.1 auの圧力バンプ内のダスト面密度が初期の10倍になったら、ストリーミング不安定が起きると仮定する。面密度を10倍にするダストの量やその位置は林モデルの固体成分の面密度分布の式から計算する。アグリゲイト同士の衝突で跳ね返りが起きるときのアグリゲイトのサイズaagg0(0.1 μm~1 m)、粒子が空間をどれくらい占領しているかの指標であるフラクタル次元x(2.0~3.0)、圧力バンプの太陽からの距離rb(2~50 au)の3つをパラメータとして数値計算を行った。ダストはH₂O氷とし、フラクタル次元は時間変化しないと仮定する。また比較のため粒子サイズが0.1 μmから変化しない、焼結なしのパターンも数値計算を行った。
結果としてまず、焼結なしに比べて焼結を考慮したほうが早くダストが溜まった。圧力バンプの位置が3 auの場合、aagg0がおよそ0.1 mmより大きければ、焼結を考慮するとダストが溜まるまでの時間が微惑星の形成年代(10万~数100万年)と整合的な結果となった。またaagg0=1 mmだと、2~3のどのフラクタル次元でも微惑星の形成年代と整合的となった。パラメータの依存性については、アグリゲイトのサイズが大きいと、受けるガス抵抗が小さくなり落下速度が速くなるため、ダストが溜まるまでの時間は早くなる。また、フラクタル次元の値が3に近づくほど、アグリゲイトはもともとコンパクトな構造で、焼結が起きてもあまり縮まないため、焼結ありとなしの結果の差が小さくなっていく。図から圧力バンプの位置が内側なほど、周りのガス密度が大きくガス抵抗も大きくなり、落下速度は遅くなるため、焼結なしの場合はダストが溜まる時間は長くなる。焼結ありの場合は、ガス密度が大きくなって落下速度を遅くさせる効果と高温で焼結の進行が早くなり、落下速度を速くさせる効果が互いに打ち消しあうため、圧力バンプの位置が変化してもダストが溜まるまでの時間はほとんど変化しない。また、あるrbより外側になると、低温で焼結が進まないため、焼結ありとなしの差がなくなる。焼結を考慮すると、考慮しない場合と比べて最大で2桁ほどの差が生まれた。
考察として、図から焼結が効くのはおよそ20auより内側の領域である。焼結を考慮しないアグリゲイトの直接合体の数値計算では、焼結が効く20 auより内側の領域で、およそ10万年で微惑星が形成されるという結果が示されている(Okuzumi et al. 2012)。しかし、そのときその領域には小さいダストはなくなっており、その状態から数100万年で形成された微惑星を形成するのは難しいと考えられる。しかし焼結と圧力バンプを考慮すればパラメータによってその数100万年というタイムスケールとも整合的なものが得られ、微惑星を作れる可能性があることが本研究の結果から考えられる。