講演情報

[PPS05-P01]プロジェクタイル径-粒径比が0.1-10のオーダーにおける低速度衝突クレータリング

*後藤 佑太1、隅田 育郎1 (1.金沢大学大学院 自然科学研究科 地球社会基盤学専攻 地球惑星科学コース)

キーワード:

クレータープロファイル、重力支配、強度支配、アーマリング、ディーぺニング

Miyamoto et al. (2007)はイトカワがラブルパイル構造を持ち、衝突する岩体と惑星を構成する岩体のサイズが同程度となり得ることを示した。Guttler et al. (2012)は、プロジェクタイル直径対ターゲット粒径比(ψ)が小さい条件でクレーターサイズが小さくなること(アーマリング)を報告した。Tatsumi and Sugita (2018)は衝突速度70 m/s-6 km/sのクレータリング実験を行い、ψに加え、衝突エネルギー対ターゲット粒子の破壊エネルギー比(ξ)がアーマリングに与える影響を調べた。ラブルパイル小惑星では衝突速度と脱出速度が同程度(10-1 m/s)で破壊しない衝突も起き得る。低速度衝突クレータリングは長年研究されてきたが(Walsh et al, 2003)、ψ<10の場合はまだ限られている(Maiti and Roy, 2024)。本研究では0.5<ψ<10の破壊が起きない衝突の下で形成されるクレーター形状、クレーターの直径と深さ、形成過程を詳しく調べた。
1. 実験手法
直径180 mm、深さ90 mmの円筒容器に球形ガラスビーズを充填し、ステンレス球プロジェクタイルを自由落下させてクレーターを形成した。落下距離hは30-2166mm、プロジェクタイルの直径Dpは2-19.05 mmの範囲の5通り、ターゲットの直径Dtは0.2mm(ψ=10~95.25), 0.8mm(ψ=2.5~23.8), 4.0mm(ψ=0.5~4.76)の3通りで、ξは10-4~103、ψは0.5~95.25の範囲で実験を行った。衝突エネルギーは10-4-10-1Jのオーダーで、クレーター形状計測およびクレーター形成過程を高速カメラで撮影した。
2. 結果
E≤10-3-10-2 J程度と低エネルギーの場合、プロジェクタイルの一部が露出したクレーターが形成され、これは凝集性を持つ砂を使った実験(Takita and Sumita, 2013)の結果と類似している。E≥10-3-10-2 Jに増加するに伴い、円錐型へ遷移した。Dt=0.2mmの場合はE>10-2 Jで中央丘を持つクレーターへ形状が遷移した。以下に本実験の主要な結果を列挙する。
(1) Dt=0.2mm (ψ=10~95.25), Dt=0.8mm (ψ=2.5~23.8)ではクレーター直径はそれぞれE0.25E0.23に比例し、重力支配(冪指数:0.25)に近い。Dt=4mm(ψ=0.5~4.76)ではE0.36に比例し、強度支配(冪指数:0.33)に近い。
(2) Dt=4mmの場合では他の2粒径と比較して、E<10-2 Jにおいて直径が小さく、アーマリングが起き、E>10-2 Jにおいてクレーターが深くなる〈ディーペニング〉。
(3) エネルギーが同じ下ではクレーター底の傾斜(深さ/直径)、容器外に放出されたエジェクタ質量、エジェクタの水平からの射出角ははDt=4mmで最大となり、プロジェクタイルが貫入する深さは最小となる。
3. 考察
Dt=0.1mmオーダーでは重力支配が成立し、これは過去の研究(Walsh et al, 2003, Hayashi and Sumita, 2017)と整合的である。以下、本実験で新しく得られた、Dt=4mmの場合の結果について考察する。同じエネルギーで比較するとプロジェクタイルが貫入する深さはDt=4mmの場合が最も浅い。E<10-2 Jでは同じエネルギー下で直径が小さいクレーターができるのは、この効果が効いているのであろう。一方で、E>10-2 Jでは、同じエネルギー下でDt=4mmの場合に最も深いクレーターができる。Pouliquen (1999)は層厚hと粒径dをパラメータとして、粉体流の実験を行った。その結果、h/dが小さくなると流動が開始する傾斜角が増大すること(即ち流動しにくくなること)を報告した。E>10-2 Jの場合、クレーター直径を粒径でスケールすると、Dt=0.2mmの場合では100-250、Dt=0.8mmの場合では25-50、Dt=4mmの場合では5-25、とDtの増加とともに、小さくなる。Dt=4mmの場合ではクレーター底の傾斜が急になり、深いクレーターができるのは、流動している層を構成する粒子の数が少ないためだと推察できる。
4. まとめ
本研究でターゲット粒径を1桁以上変えて、低速度衝突クレータリング実験を行った。細粒(Dt=0.2, 0.8mm)の場合では重力支配となる一方、粗粒(Dt=4.0mm)の場合では、強度支配へと移行した。粗粒の場合は細粒の場合と比較して、低エネルギー領域(E<10-2 J)ではクレーターの直径が小さくなるが、高エネルギー領域(E>10-2 J)ではクレーターが深くなった。