講演情報

[PPS05-P03]クレーター形成時の衝突体被覆率に関する実験的研究:衝突体と混合したエジェクタカーテンの堆積過程

*生駒 杏1、荒川 政彦1、保井 みなみ1、柿木 玲亜1 (1.神戸大学大学院理学研究科)

キーワード:

レゴリス・ガーデニング、衝突体の生残性、エジェクタカーテンの堆積過程、クレーター形成実験、衝突体被覆率、低強度衝突体の模擬実験

背景:月や小惑星の表面に見られる無数の衝突クレーターは、過去の小天体衝突によって形成されたと考えられている。衝突が発生すると、標的天体の表面は掘削され、衝突体の一部が標的の表層物質に取り込まれ、混合される。この過程はレゴリス・ガーデニングと呼ばれ、月の角礫岩や隕石中に見られる異なる起源物質の混合などの証拠によって裏付けられている。
小惑星探査機「はやぶさ2」は、C型小惑星リュウグウの表面において、クレーター外部からS型小惑星起源の岩片を発見した[1]。この発見は、異なる起源を持つ物質が衝突を通じて小惑星表層に取り込まれること、さらに衝突体物質がクレーター内部に留まるだけでなく、外部へ放出され再堆積することを示している。
これまでの衝突実験は主に標的物質の破砕強度に焦点を当ててきた。その中で、Nagaokaら[2]は衝突体の破砕強度を調べ、衝突体の破砕特性が標的の種類や衝突条件によって変化することを示した。
近年の探査機観測により、小惑星物質は分類型に関わらず、単一の岩塊ではなく、力学的に弱く高い空隙率を持つことが明らかになっている。このような低強度物質は、レゴリス・ガーデニングにおける破砕や混合を含む衝突過程に強い影響を及ぼすと考えられる。本研究では、力学的に弱い衝突体を模擬した弾丸を用いて衝突実験を行い、レゴリス層内における弾丸物質の混合過程を明らかにした。
実験方法:本研究では、石英砂と石膏を質量比10:1で混合して作製した石英砂–石膏弾丸を使用した。弾丸の圧縮強度は250kPaであり、直径・長さともに10mmおよび3mmの2種類を用いた。実験後に紫外線(UV)照射下で弾丸破片の空間分布を可視化し、画像に基づく定量解析を可能にするため、石英砂–石膏弾丸には蛍光顔料粉末を混合した。弾丸破片と石英砂レゴリス模擬物質との混合挙動を評価するため、標的には石英砂を用いた。すべての衝突実験は、神戸大学に設置された縦型一段式軽ガス銃を用いて実施した。衝突速度は17〜118m/sの範囲である。実験は約100Paの低圧条件下で行われ、衝突過程は2台の高速カメラで撮影された。
結果:まず、衝突点を中心として同心円状に円環を設定し、それぞれの円環内に含まれる弾丸破片の面積を求めると、衝突速度と破片サイズによる分布の違いが見られた。これはこれらのパラメーターがクレーターの大きさに依存するためと考えられる。そこで、弾丸破片の面積を円環の面積で規格化し被覆率とし、衝突点からの距離をクレーター半径で規格化して解析を行うと、すべてピークはクレーター内に収まっていることが分かった。
また、被覆率の距離分布は、衝突点に最も近い領域で衝突条件によらず被覆率がほぼ一定であるRegion1、被覆率が距離とともにべき関数的に減少しているRegion2、べき関数的な減少の傾きがさらに大きくなるRegion3の3領域に分類できることが分かった。Region1での被覆率は一定なのでσ0とし、Region2とRegion3はそれぞれ異なるべき乗則で表すことでこの被覆率分布をモデル化でした。
そして、このモデルを使ってクレーターの外側にどれくらいの弾丸破片が混合しているかを調べるために外側輸送効率γを外側弾丸破片質量/内側弾丸破片質量と定義した。γの値から、速度が大きいほど弾丸破片がより外側に輸送されており、特に最高速度では内側より外側の方が弾丸破片が多いことが分かった。さらに、閾値処理した画像で求めた総面積から計算したγと比較すると両者が概ね一致していることから、本モデルの妥当性が示された。
参考文献:[1] Tatsumi, E. et al. (2021). Nature Astronomy, 5(1), 39–45. [2] Nagaoka et al. (2014). Meteoritics & Planetary Science, 49(1), 69–79.