講演情報

[PPS12-13]普通隕石と炭素質隕石にみられる衝撃変成度2分性の起源★招待講演

*黒澤 耕介1,2、Collins Gareth3、Davison Thomas3、岡本 尚也2、石橋 高2、松井 孝典2,4 (1.神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻、2.千葉工業大学 惑星探査研究センター、3.Impact and Astromaterials Research Centre, Department of Earth Science and Engineering, Imperial College London、4.千葉工業大学 地球学研究センター)

キーワード:

天体衝突、隕石、衝撃変成、高速度衝突実験、質量分析、数値衝突計算

地上で発見された隕石を薄片にして観察すると, 多くの場合, 衝撃変成組織が見られる. これはその隕石が母天体上の岩体であったときに経験した天体衝突の痕跡であると考えられている. 過去の研究で衝撃変成度とそれを作るのに必要な衝撃圧力の関係が表にされており, 各隕石の衝撃変成度が7段階(S1からS7)分類されている [e.g., Stöffler+18, MaPS 53, 5–49]. ここで各隕石種ごとの衝撃変成度の頻度分布に着目する. 普通隕石の多くがS3以上に分類される[e.g., Bischoff+19, MaPS 54, 2189–2202]のに対して, 炭素質隕石のほとんどがS1に分類される [e.g., Scott+92, GCA 56, 4281–4293]. 我々はこの「衝撃変成度2分性」の起源を明らかにすることを目指した. Tomeoka+03は天体衝突時に粘土鉱物からの脱水が起こり, その勢いで強い衝撃変成を受けた組織が吹き飛ばされてしまうというアイデアを提案した [Tomeoka+03, Nature 423, 60–62]. この機構では水質変成を受けていない炭素質隕石も衝撃変成度が低いことを説明できない. 本研究ではTomeoka+03のアイデアを炭素質隕石に普遍的に含まれる有機物に適用することで解決を試みた.
我々は隕石模擬試料として, 酸化鉄のみ(Fe–O), 酸化鉄+黒鉛(Fe–O–C), 石英のみ(Si–O), 石英+黒鉛(Si–O–C)の4種類を用意した. ここで酸化鉄, 石英はそれぞれ含水, 無水の炭素質隕石の模擬物質として用いた. 黒鉛は隕石の有機物の大半を占める不溶性有機物[e.g., Yabuta+23, Science 379, eabn9057]の模擬物質として選択した. これらの物質はかならずしも隕石に含まれるものではないが, その衝撃応答や化学安定性が近いこと, 粉末試薬の入手性の高さから選択した. これらの試料を混合し, ペレット状に加工して衝突実験を実施した. 空隙率は50–80%の範囲で変化させた. 高速度衝突実験は千葉工業大学惑星探査研究センターに設置されていた二段式水素ガス衝撃銃[Kurosawa+15. JGR-Planets 120, 1237–1251]を用いて行った. 弾丸には酸化アルミニウムを用い, 衝突速度を3–7 km s-1の範囲で変化させた. 計測はTwo-valve method [Kurosawa+19, GRL 46, 7258–7267]と四重極質量分析計を組み合わせて, 完全開放系で発生した気体を直接計測した. 較正実験を行うことで, 発生ガスの絶対量を求めることができる. なお実験装置は現在神戸大学に移設されている.
実験の結果, (1) 標的に炭素が含まれていると発生ガス量が最大で2桁程度上昇すること, (2) 発生ガス量は衝突速度のべき乗で増加すること, (3) 発生したガスの温度は~2000 Kに及ぶことがわかった. (1)と(3)の結果は炭素質隕石物質に衝撃波が伝播すると, 有機物と鉱物が反応し, 爆発を起こすことを示唆している. 爆発は成長中のクレータの最表面に位置する最も高圧高温を受けた領域で起こると考えられ, 強い衝撃変成を受けた組織ごと宇宙空間に向けて流出する. エネルギー保存則からガス質量とガス温度から爆発の勢いを推定したところ, 直径100 kmの隕石母天体からはS3以上の強い衝撃変成を受けた物質が吹き飛ばされてしまった可能性が高い. 一方でCeres程度まで成長した天体の場合は重力が強く, 衝撃変成組織が天体表面に再集積して蓄積されるであろう. 本研究はすでに論文として出版されている[Kurosawa+25, Nature Communications, 16, 3608, https://doi.org/10.1038/s41467-025-58474-2]. 詳細についてはそちらを参照されたい.

謝辞: 本研究はJAXA宇宙科学研究所超高速衝突実験施設共同利用の援助を受けています. iSALEの開発者であるK. Wünnemann, B. Ivanov, J. Melosh, D. Elbeshausenの各氏に感謝致します. 数値計算の一部は国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)の計算サーバを用いて行われました.