講演情報
[PPS12-18]原始太陽系円盤におけるダスト–ガス間酸素同位体交換による酸素同位体組成進化
*石﨑 梨理1、橘 省吾1、井田 茂2,3 (1. 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.Department of Astronomy, School of Science, Westlake University、3.東京科学大学ELSI)
キーワード:
原始惑星系円盤、原始太陽系円盤、ガス-ダスト相互作用、モンテカルロシミュレーション、酸素同位体
Introduction: 地球をはじめとする太陽系天体が太陽に比べ16Oに乏しい一方で、CAI (calcium–aluminum-rich inclusions) は太陽と同様の酸素同位体組成を持つダストから形成されたと考えられている。CAIは太陽系形成初期の数十万年の間に形成された太陽系最古の物質のため、この組成差は太陽系物質の酸素同位体組成の時間進化を記録していると考えられる。この組成進化は、原材料となったケイ酸塩ダストが、太陽に比べ16Oに富んだCOや16Oに乏しい水蒸気と酸素同位体交換をおこなった結果として理解されている。Yurimoto & Kuramoto (2004) は、16Oに乏しい水蒸気が濃集した内側円盤において酸素同位体交換が起きることにより、現在の酸素同位体組成が達成されたと提案した。水蒸気濃集メカニズムとしては、氷ペブルの内側ドリフトと蒸発が有力視されている。
Methods: 初期太陽系における酸素同位体組成進化を定量的に調べ、原始太陽系円盤の適切な円盤条件を明らかにすることを目的として、粘性進化する原始惑星系円盤 (e.g., Ida et al. 2016) における非晶質ケイ酸塩–円盤ガス (H2OとCO) 間の双方向的な酸素同位体交換を計算する新たなモンテカルロモデルを開発した。本モデルは、氷粒子のサイズを考慮してダスト・ガス超粒子の独立した軌跡を追跡する。非晶質ケイ酸塩–H2O間 または –CO間の同位体交換反応は、実験的に決定された反応速度論を用いて計算される (Yamamoto et al. 2018, 2020)。
Results and Discussion: 酸素同位体交換は狭い温度帯 (「酸素同位体交換ライン」) で効果的に進行する (Ishizaki et al. 2023)。特に、~700–800 Kでケイ酸塩を通して間接的なH2O–CO間同位体交換が進行することで、H2O–CO間の直接的な同位体交換温度(>~1000 K) よりもかなり低温の領域において同位体平衡が達成されることが明らかになった。
同位体交換ライン内側領域のδ17O 進化は、H2Oスノーライン外側における氷粒子ストークス数 (St) に依存する水蒸気濃集の程度に支配される。小さな粒子 (乱流粘性係数α=10–3 に対し St<~10–4) は内側円盤における濃集を引き起こせない一方、大きな粒子 (α=10–3 に対し St>~10–3) は水蒸気を効率的に供給しすぎるため、過度に高いδ17O 値と外側氷リザバーの急速な枯渇を引き起こす。中間粒子サイズの場合、水蒸気は徐々に濃集し、Myrタイムスケール以上維持しうる定常δ17O値を達成する。
濃集タイムスケールは円盤ダイナミクスにより決定される: H2O濃集はガス移流反転ライン (内向き/外向き移流の境界) がスノーラインを越えた瞬間に本格的に開始し、その水蒸気が円盤内縁に到達すると定常状態に達する。このタイムスケールはStには依存せず、円盤モデルにより決定される。対照的に、定常δ17O 値はスノーラインにおけるH2O–ケイ酸塩ダスト供給量比に依存し、無次元比St/αに支配される。内側領域におけるδ17O の変動および水蒸気濃集タイミングは半解析式により予測可能であり、予測値が数値結果とよく一致することが確認された。
数値結果と解析結果の双方は、乱流粘性係数 α=10–3 およびH2O氷のストークス数~5 × 10–4 が太陽系初期の酸素同位体組成進化を再現する上で適切であることを示唆する。このとき、CAIは太陽系形成初期の数十万年の間に16O に富んだダストから形成され、その後1 Myr 以上にわたり地球型の同位体組成を維持する。これはコンドリュールや地球型惑星、その他太陽系物質の酸素同位体組成とも整合的である。
Methods: 初期太陽系における酸素同位体組成進化を定量的に調べ、原始太陽系円盤の適切な円盤条件を明らかにすることを目的として、粘性進化する原始惑星系円盤 (e.g., Ida et al. 2016) における非晶質ケイ酸塩–円盤ガス (H2OとCO) 間の双方向的な酸素同位体交換を計算する新たなモンテカルロモデルを開発した。本モデルは、氷粒子のサイズを考慮してダスト・ガス超粒子の独立した軌跡を追跡する。非晶質ケイ酸塩–H2O間 または –CO間の同位体交換反応は、実験的に決定された反応速度論を用いて計算される (Yamamoto et al. 2018, 2020)。
Results and Discussion: 酸素同位体交換は狭い温度帯 (「酸素同位体交換ライン」) で効果的に進行する (Ishizaki et al. 2023)。特に、~700–800 Kでケイ酸塩を通して間接的なH2O–CO間同位体交換が進行することで、H2O–CO間の直接的な同位体交換温度(>~1000 K) よりもかなり低温の領域において同位体平衡が達成されることが明らかになった。
同位体交換ライン内側領域のδ17O 進化は、H2Oスノーライン外側における氷粒子ストークス数 (St) に依存する水蒸気濃集の程度に支配される。小さな粒子 (乱流粘性係数α=10–3 に対し St<~10–4) は内側円盤における濃集を引き起こせない一方、大きな粒子 (α=10–3 に対し St>~10–3) は水蒸気を効率的に供給しすぎるため、過度に高いδ17O 値と外側氷リザバーの急速な枯渇を引き起こす。中間粒子サイズの場合、水蒸気は徐々に濃集し、Myrタイムスケール以上維持しうる定常δ17O値を達成する。
濃集タイムスケールは円盤ダイナミクスにより決定される: H2O濃集はガス移流反転ライン (内向き/外向き移流の境界) がスノーラインを越えた瞬間に本格的に開始し、その水蒸気が円盤内縁に到達すると定常状態に達する。このタイムスケールはStには依存せず、円盤モデルにより決定される。対照的に、定常δ17O 値はスノーラインにおけるH2O–ケイ酸塩ダスト供給量比に依存し、無次元比St/αに支配される。内側領域におけるδ17O の変動および水蒸気濃集タイミングは半解析式により予測可能であり、予測値が数値結果とよく一致することが確認された。
数値結果と解析結果の双方は、乱流粘性係数 α=10–3 およびH2O氷のストークス数~5 × 10–4 が太陽系初期の酸素同位体組成進化を再現する上で適切であることを示唆する。このとき、CAIは太陽系形成初期の数十万年の間に16O に富んだダストから形成され、その後1 Myr 以上にわたり地球型の同位体組成を維持する。これはコンドリュールや地球型惑星、その他太陽系物質の酸素同位体組成とも整合的である。
