講演情報
[PPS12-20]複数岩相を有する火星隕石Northeast Africa 053の起源解明
*待田 凌1、三河内 岳1 (1.東京大学)
キーワード:
火星隕石、シャーゴッタイト、結晶化過程
1. 背景と目的
本研究で扱う火星隕石Northeast Africa (NEA) 053 (図1) は粒径の異なる複数の領域がシャープなコンタクトで接している特殊なシャーゴッタイトであり、岩相同士の関係や成因を調べることで火星マグマの特殊な結晶化環境を探ることができる。
そこで本研究では、薄片内の二領域を岩相A (粗粒側) と岩相B (細粒側) に区分し、鉱物モード比、鉱物組成分析、岩石組織の定量解析や、鉱物組成に基づく平衡温度・酸素フガシティ推定の結果を岩相Aと岩相Bで比較し、二岩相の関係と成因を検討した。
2. 分析試料および手法
偏光顕微鏡およびSEMで撮影したBSE像により全体組織を把握し、EPMAにより元素マップ取得と定量分析を行った。組織解析としては、元素マップを用いた鉱物モード比の算出、結晶サイズ分布 (CSD) を用いた結晶化環境や冷却速度の推定、空間分布パターン (SDP) を用いた結晶配置の分析を行った。また、PyroxeneやFe-Ti酸化物の組成を元に、Pyroxeneコア結晶化時の平衡温度、Fe-Ti酸化物結晶化時の平衡温度、酸素フガシティの推定を行った。
3. 結果
3.1. 鉱物観察とモード比
NEA 053は主にOlivine、Pyroxene、Maskelyniteで構成されており、その他少量のFe-Ti酸化物やSpinel、Caリン酸塩が存在する。両岩相ともにPyroxeneがOlivineを囲い込むポイキリティック組織が少量見られた。全体のモード比はOlivineが12%、Pyroxeneが58%、Maskelyniteが26%、その他の鉱物が合計4%である。岩相A、岩相BともにPyroxeneが最も多く存在する。岩相AはOlivineの量が岩相Bより10%ほど多く、Maskelyniteの量が岩相Bより10%ほど少ない。
3.2. 鉱物組成
Olivineの鉱物組成は岩相Aの方が岩相BよりもMgに富んでおり、岩相Aにより始原的なOlivineが多く存在するという結果となった。一方、PyroxeneやMaskelyniteの組成には岩相ごとの大きな差が見られないという結果になった。また、Pyroxeneの組成は過去に報告されたポイキリティックシャーゴッタイトのPyroxene組成よりもオリビンフィリックシャーゴッタイトのPyroxene組成に近い傾向を持つことがわかった。
3.3. 組織解析
CSDから推定した冷却時間は、Olivineでは岩相Aと岩相Bでほぼ同等である一方、Pyroxeneは岩相Aの方が岩相Bより明確に長いという結果になった。また、CSDグラフ全体の傾きから、両方の岩相で大きな結晶が結晶分別などの理由で蓄積していることが示唆された。
SDPでは、Olivineは空間的に偏って存在しており、結晶が連続的に繋がった配列 (touching framework) を形成していない。一方、Pyroxeneは比較的均一な分布で存在し、 touching frameworkを形成しているという結果となった。
3.4. 平衡温度、酸素フガシティ
QUILFプログラムによる推定では、Pyroxeneコア結晶化時の温度は岩相Aが1258~1283 ℃、岩相Bが1154~1208 ℃で、岩相Aがやや高温側を示す。Fe-Ti酸化物は岩相Aが645 ℃、岩相Bが575~599 ℃、酸素フガシティは岩相AがQFM +0.09、岩相BがQFM −0.36~ −1.52という値となった。Fe-Ti酸化物の温度は非常に低く、再平衡の影響を受けている可能性がある。
4. 二つの岩相の関係と結晶化過程
鉱物組成や組織解析の結果からは、いずれも二岩相の成因に大きな差はない可能性が示されており、単一マグマにおける結晶分別を伴う多段階結晶化で二岩相が形成したというシナリオと整合的である。
結晶化初期にOlivineやSpinelが結晶化し始め、Pyroxeneが結晶化する時に一部のOlivineを囲い込むことでポイキリティック組織を少量形成した。その後Pyroxeneが成長を続け、touching frameworkを形成することで後の結晶分別や結晶成長を制限し、結晶化後期に残っていたメルト部分が細粒な結晶を中心に後期に結晶化したと考えられる。この結晶化過程によってNEA 053がポイキリティックシャーゴッタイトとオリビンフィリックシャーゴッタイトの両方に共通点を持っている理由を説明できる。
以上のことから、NEA 053の結晶化順序および結晶化モデルは図2のように推定することができた。
本研究で扱う火星隕石Northeast Africa (NEA) 053 (図1) は粒径の異なる複数の領域がシャープなコンタクトで接している特殊なシャーゴッタイトであり、岩相同士の関係や成因を調べることで火星マグマの特殊な結晶化環境を探ることができる。
そこで本研究では、薄片内の二領域を岩相A (粗粒側) と岩相B (細粒側) に区分し、鉱物モード比、鉱物組成分析、岩石組織の定量解析や、鉱物組成に基づく平衡温度・酸素フガシティ推定の結果を岩相Aと岩相Bで比較し、二岩相の関係と成因を検討した。
2. 分析試料および手法
偏光顕微鏡およびSEMで撮影したBSE像により全体組織を把握し、EPMAにより元素マップ取得と定量分析を行った。組織解析としては、元素マップを用いた鉱物モード比の算出、結晶サイズ分布 (CSD) を用いた結晶化環境や冷却速度の推定、空間分布パターン (SDP) を用いた結晶配置の分析を行った。また、PyroxeneやFe-Ti酸化物の組成を元に、Pyroxeneコア結晶化時の平衡温度、Fe-Ti酸化物結晶化時の平衡温度、酸素フガシティの推定を行った。
3. 結果
3.1. 鉱物観察とモード比
NEA 053は主にOlivine、Pyroxene、Maskelyniteで構成されており、その他少量のFe-Ti酸化物やSpinel、Caリン酸塩が存在する。両岩相ともにPyroxeneがOlivineを囲い込むポイキリティック組織が少量見られた。全体のモード比はOlivineが12%、Pyroxeneが58%、Maskelyniteが26%、その他の鉱物が合計4%である。岩相A、岩相BともにPyroxeneが最も多く存在する。岩相AはOlivineの量が岩相Bより10%ほど多く、Maskelyniteの量が岩相Bより10%ほど少ない。
3.2. 鉱物組成
Olivineの鉱物組成は岩相Aの方が岩相BよりもMgに富んでおり、岩相Aにより始原的なOlivineが多く存在するという結果となった。一方、PyroxeneやMaskelyniteの組成には岩相ごとの大きな差が見られないという結果になった。また、Pyroxeneの組成は過去に報告されたポイキリティックシャーゴッタイトのPyroxene組成よりもオリビンフィリックシャーゴッタイトのPyroxene組成に近い傾向を持つことがわかった。
3.3. 組織解析
CSDから推定した冷却時間は、Olivineでは岩相Aと岩相Bでほぼ同等である一方、Pyroxeneは岩相Aの方が岩相Bより明確に長いという結果になった。また、CSDグラフ全体の傾きから、両方の岩相で大きな結晶が結晶分別などの理由で蓄積していることが示唆された。
SDPでは、Olivineは空間的に偏って存在しており、結晶が連続的に繋がった配列 (touching framework) を形成していない。一方、Pyroxeneは比較的均一な分布で存在し、 touching frameworkを形成しているという結果となった。
3.4. 平衡温度、酸素フガシティ
QUILFプログラムによる推定では、Pyroxeneコア結晶化時の温度は岩相Aが1258~1283 ℃、岩相Bが1154~1208 ℃で、岩相Aがやや高温側を示す。Fe-Ti酸化物は岩相Aが645 ℃、岩相Bが575~599 ℃、酸素フガシティは岩相AがQFM +0.09、岩相BがQFM −0.36~ −1.52という値となった。Fe-Ti酸化物の温度は非常に低く、再平衡の影響を受けている可能性がある。
4. 二つの岩相の関係と結晶化過程
鉱物組成や組織解析の結果からは、いずれも二岩相の成因に大きな差はない可能性が示されており、単一マグマにおける結晶分別を伴う多段階結晶化で二岩相が形成したというシナリオと整合的である。
結晶化初期にOlivineやSpinelが結晶化し始め、Pyroxeneが結晶化する時に一部のOlivineを囲い込むことでポイキリティック組織を少量形成した。その後Pyroxeneが成長を続け、touching frameworkを形成することで後の結晶分別や結晶成長を制限し、結晶化後期に残っていたメルト部分が細粒な結晶を中心に後期に結晶化したと考えられる。この結晶化過程によってNEA 053がポイキリティックシャーゴッタイトとオリビンフィリックシャーゴッタイトの両方に共通点を持っている理由を説明できる。
以上のことから、NEA 053の結晶化順序および結晶化モデルは図2のように推定することができた。
