講演情報
[PPS12-P04]結晶内Eu負異常の進化に基づく火成CAI結晶化過程における漸次的還元化の解明
*鈴村 明政1,2、秋澤 紀克3、山本 大貴4、岡林 識起5、伊藤 正一6、浅沼 尚2 (1.信州大学理学部、2.京都大学人間・環境学研究科、3.広島大学先進理工系科学研究科、4.九州大学理学研究院、5.日本大学生物資源科学部、6.京都大学理学研究科)
キーワード:
CAI、Eu異常、酸化還元条件、結晶成長
コンドライト隕石中のCa-Al-rich Inclusions (CAIs) の化学・同位体組成は、CAI形成領域に関する温度・圧力といった重要な物理化学条件の範囲に制約を与えてきた。特に、Compact Type A (CTA) やType Bなどの火成CAI中の鉱物は、結晶化過程におけるガス環境の時間的変化を保存している。火成CAIの代表的な構成鉱物の一つであるAlやTiに富む輝石 (Fassaite) は、結晶成長中のメルトとガス間の相互作用による16O-poorから16O-richへの酸素同位体進化を記録していることが知られており (e.g., Kawasaki et al., 2018; Suzumura et al., 2021; Yamamoto et al., 2021)、化学的特徴も同様にガス環境の進化の軌跡を保存していると期待される。例えばfassaite中のTiにはTi3+とTi4+が存在し、その価数比は酸化還元を反映すると期待される。しかし、fassaiteの結晶成長に応じた総Ti含有量 (Titotal = (Ti3++Ti4+) )が減少するにつれ、そのTi3+/Titotalが~0.7から0.1に減少することが報告されているものの、これは星雲ガスと平衡を伴わない分別結晶化の結果として解釈されている(e.g., Simon and Grossman 2006)。一方で、希土類元素 (REE) は、REEパターンとして凝縮プロセスや分別結晶化の程度を推定するために使用されていると共に、希土類元素異常は価数変化に敏感であることも知られている。したがって、結晶成長に沿った酸化還元指標として効果的な希土類元素種を特定することは、星雲のダイナミクスを理解することにつながると言える。
そこで本研究では、火成CAI中のfassaiteの結晶成長に沿って、SEM-EDSによる岩石組織観察と、東大大海研・広島大設置のEPMA (JEOL JXA-8900, JXA-iSP100) を用いたTiのスポット分析およびマップ取得、京大設置のLA-ICP質量分析計 (Raijin α + Agilent 8900) を用いた微量元素のスポット分析及びマップ取得を行った。サンプルはNWA7865 reduced CV3コンドライトに含まれるCTA CAI KU-N-04を用いた。これは形成履歴およびO同位体進化、Al-Mg年代が研究されたKU-N-02薄片の反対切片である (Suzumura et al., 2021, 2024)。
KU-N-04 CTA中のブロック状fassaiteは、残渣メルトからの最終固化鉱物である。Ti量は結晶コアからリムにかけて同心円状に単調減少しているものの (Titotal :17~4 wt%)、Ti3+/Titotal比はTitotal量に依らずほぼ一定値 (0.7~0.85) を示し、先行研究で確認されている明確な減少傾向は見られなかった。一方で、REEパターンはLaからLuまで右肩上がりでEuの負異常を示し、先行研究の結果と同様であった (e.g., Simon et al., 1999)。REE濃度はTitotal量減少に伴い上昇し、これはマッピング分析からも2次元的に確認された。また、Euの負異常の程度を表すEu/Eu*は、Titotal量の減少にともなって0.2から0.05へと有意に低下、すなわち負の異常の深化が観察された。閉鎖系/開放系(レドックス一定・漸次的酸化・漸次的還元)における結晶化モデル計算により、Euの負異常が増大するためには、残渣メルトが漸次的に還元化するガスと酸化還元平衡に達することが必要であることが示された。このことは、分別結晶化に伴うメルト中のTi3+濃度の減少が、周囲の還元的なガスによるメルトの還元反応によって相殺され、その結果Ti3+/Titotal比が外見上ほぼ一定に維持された可能性を示唆する。また、この化学トレンドはKU-N-02 CTA fassaiteの結晶成長に伴って16O-poor (Δ17O~ −2‰) から16O-rich (Δ17O~ −24‰) に変化する酸素同位体進化 (Suzumura et al. 2021) と同期していると推察される。すなわち、化学組成及び同位体組成の変化は、fassaite結晶化という短時間スケールにおいて、H2Oガス (16O-poor供給源) の枯渇に伴い、H2O/H2比(酸化還元状態)が低下し、星雲ガスが還元的に変化したことを示唆している。これらの結果から、単一結晶内の結晶成長に沿ったその場REE分析により原始太陽系星雲のダイナミックな酸化還元環境の進化を明らかにできる可能性を実証した。
そこで本研究では、火成CAI中のfassaiteの結晶成長に沿って、SEM-EDSによる岩石組織観察と、東大大海研・広島大設置のEPMA (JEOL JXA-8900, JXA-iSP100) を用いたTiのスポット分析およびマップ取得、京大設置のLA-ICP質量分析計 (Raijin α + Agilent 8900) を用いた微量元素のスポット分析及びマップ取得を行った。サンプルはNWA7865 reduced CV3コンドライトに含まれるCTA CAI KU-N-04を用いた。これは形成履歴およびO同位体進化、Al-Mg年代が研究されたKU-N-02薄片の反対切片である (Suzumura et al., 2021, 2024)。
KU-N-04 CTA中のブロック状fassaiteは、残渣メルトからの最終固化鉱物である。Ti量は結晶コアからリムにかけて同心円状に単調減少しているものの (Titotal :17~4 wt%)、Ti3+/Titotal比はTitotal量に依らずほぼ一定値 (0.7~0.85) を示し、先行研究で確認されている明確な減少傾向は見られなかった。一方で、REEパターンはLaからLuまで右肩上がりでEuの負異常を示し、先行研究の結果と同様であった (e.g., Simon et al., 1999)。REE濃度はTitotal量減少に伴い上昇し、これはマッピング分析からも2次元的に確認された。また、Euの負異常の程度を表すEu/Eu*は、Titotal量の減少にともなって0.2から0.05へと有意に低下、すなわち負の異常の深化が観察された。閉鎖系/開放系(レドックス一定・漸次的酸化・漸次的還元)における結晶化モデル計算により、Euの負異常が増大するためには、残渣メルトが漸次的に還元化するガスと酸化還元平衡に達することが必要であることが示された。このことは、分別結晶化に伴うメルト中のTi3+濃度の減少が、周囲の還元的なガスによるメルトの還元反応によって相殺され、その結果Ti3+/Titotal比が外見上ほぼ一定に維持された可能性を示唆する。また、この化学トレンドはKU-N-02 CTA fassaiteの結晶成長に伴って16O-poor (Δ17O~ −2‰) から16O-rich (Δ17O~ −24‰) に変化する酸素同位体進化 (Suzumura et al. 2021) と同期していると推察される。すなわち、化学組成及び同位体組成の変化は、fassaite結晶化という短時間スケールにおいて、H2Oガス (16O-poor供給源) の枯渇に伴い、H2O/H2比(酸化還元状態)が低下し、星雲ガスが還元的に変化したことを示唆している。これらの結果から、単一結晶内の結晶成長に沿ったその場REE分析により原始太陽系星雲のダイナミックな酸化還元環境の進化を明らかにできる可能性を実証した。
