講演情報
[PPS12-P15]炭素質コンドライト隕石のルテニウム同位体分析
*野村 憲央1、中西 奈央1、横山 哲也1 (1.東京科学大学理学院地球惑星科学系)
キーワード:
ルテニウム同位体、炭素質コンドライト、N-TIMS、核合成起源同位体異常
近年、様々な隕石・地球試料中に存在するルテニウム(Ru)から、核合成起源同位体異常が報告されている。Ru同位体にはs核種、r核種、p核種があり、隕石中における同位体比を高精度で測定することで、太陽系物質の起源や混合過程に関する知見が得られる。また、隕石中のRuとモリブデン(Mo)同位体比を二次元プロットすると、同位体異常は炭素質(CC)グループと非炭素質(NC)グループに二分され、CC隕石とNC隕石の母天体がそれぞれ異なる領域・条件下で形成されたことも示唆されている[1]。さらに、Ruは惑星のコア-マントル分化時に強くコアに濃集する強親鉄元素(HSE)に分類される。分化天体のケイ酸塩層からRuが除去されていることから、天体への衝突溶融岩や地球のケイ酸塩層に含まれるRuの同位体比を用いて天体衝突の起源物質や後期集積物質の供給源に制約を与えることができる[2, 3]。以上のようにRu同位体は宇宙化学的に極めて有用なトレーサーである。
隕石や地球試料のRu同位体測定はMC-ICP-MSやN-TIMSを用いて行われる[2, 4]。N-TIMSによるRu同位体分析を行うには、酸を用いて試料を分解し、1段階または2段階のカラム分離およびマイクロ蒸留でRuの分離・精製を行う必要がある[4]。本研究の目的は、Ruの化学分離とTIMS測定法を炭素質コンドライト隕石用に最適化し、実際に同位体分析を行うことである。炭素質コンドライト隕石のRu同位体分析に関する先行研究は少なく、さらにその同位体測定のほとんどは、MC-ICP-MSが用いられている[2]。N-TIMSによる炭素質コンドライト隕石のRu同位体分析を行うことは、分析法の妥当性の評価、同位体データの追加、および信頼度の向上という点で重要である。
本研究では3つの炭素質コンドライト、Murchison(CM2)、Allende(CV3)、Tagish Lake(C2-ung)に加え、鉄隕石のChinga(ungrouped)とCanyon Diablo(IAB)を用いた。初めに分析法の最適化のため、鉄隕石2試料を用いて実験を行った。十分に洗浄した鉄隕石の破片を、HClを用いて高温下で分解した。試料の化学分離では、陽イオン交換樹脂AG50W-X8を用いた第1カラムにおいてRuとMoを同一フラクションで回収し、陰イオン交換樹脂1-X8を用いた第2カラムでRuとMoの完全分離を達成した。第2カラムで回収したRuフラクションをマイクロ蒸留することにより、他元素からRuをさらに精製した。精製した試料を金属フィラメントに塗布し、TIMS内部に装填して同位体分析を行った。鉄隕石2試料の化学処理におけるRu回収率はChingaが約40%、Canyon Diabloが約60%であったが、TIMS測定を行うために十分なRu量を回収できた。一方、Moの第2カラムまでの回収率は約100%であった。鉄隕石2試料のRu同位体測定の結果は、すべての同位体比について先行研究[5]の値と誤差範囲で一致したことから、本研究におけるTIMS分析の信頼性が確認された。
今後、鉄隕石2試料に適用した手法を用い、炭素質コンドライト3試料の測定を行う。粉末試料をHCl、HNO3およびHFを用いて高温下で分解した後、2段階のカラム分離でRuの精製とMoの同時回収を行い、TIMSによりRu同位体分析を行う。試料からのRu回収率を確認、TIMS測定により得られた同位体比とその繰り返し再現性について先行研究と比較し、本研究の手法を評価する。また、測定試料数を増やしたうえで、試料から同時分離したMoの同位体分析も行い、得られたRuおよびMo同位体比を用いて炭素質コンドライトの核合成起源同位体異常を考察し、隕石母天体の形成過程についての議論を行う。炭素質コンドライトの同一溶液から分離したRu、Moの同位体比を用いて二次元プロット図を作成し、核合成起源同位体異常についての考察を従来よりも精密に行うことで、NC-CC各領域における物質進化の研究が前進することが期待される。
References: [1] Worsham et al. (2019). EPSL, 521, 103-112. [2] Fischer-Gödde & Kleine (2017). Nature, 541, 525-527. [3] Worsham & Kleine (2021). Sci Adv, 7, eabh2837. [4] Bermingham et al. (2016). IJMS, 403, 15-26. [5] Fischer-Gödde et al. (2015). GCA, 168, 151-171.
隕石や地球試料のRu同位体測定はMC-ICP-MSやN-TIMSを用いて行われる[2, 4]。N-TIMSによるRu同位体分析を行うには、酸を用いて試料を分解し、1段階または2段階のカラム分離およびマイクロ蒸留でRuの分離・精製を行う必要がある[4]。本研究の目的は、Ruの化学分離とTIMS測定法を炭素質コンドライト隕石用に最適化し、実際に同位体分析を行うことである。炭素質コンドライト隕石のRu同位体分析に関する先行研究は少なく、さらにその同位体測定のほとんどは、MC-ICP-MSが用いられている[2]。N-TIMSによる炭素質コンドライト隕石のRu同位体分析を行うことは、分析法の妥当性の評価、同位体データの追加、および信頼度の向上という点で重要である。
本研究では3つの炭素質コンドライト、Murchison(CM2)、Allende(CV3)、Tagish Lake(C2-ung)に加え、鉄隕石のChinga(ungrouped)とCanyon Diablo(IAB)を用いた。初めに分析法の最適化のため、鉄隕石2試料を用いて実験を行った。十分に洗浄した鉄隕石の破片を、HClを用いて高温下で分解した。試料の化学分離では、陽イオン交換樹脂AG50W-X8を用いた第1カラムにおいてRuとMoを同一フラクションで回収し、陰イオン交換樹脂1-X8を用いた第2カラムでRuとMoの完全分離を達成した。第2カラムで回収したRuフラクションをマイクロ蒸留することにより、他元素からRuをさらに精製した。精製した試料を金属フィラメントに塗布し、TIMS内部に装填して同位体分析を行った。鉄隕石2試料の化学処理におけるRu回収率はChingaが約40%、Canyon Diabloが約60%であったが、TIMS測定を行うために十分なRu量を回収できた。一方、Moの第2カラムまでの回収率は約100%であった。鉄隕石2試料のRu同位体測定の結果は、すべての同位体比について先行研究[5]の値と誤差範囲で一致したことから、本研究におけるTIMS分析の信頼性が確認された。
今後、鉄隕石2試料に適用した手法を用い、炭素質コンドライト3試料の測定を行う。粉末試料をHCl、HNO3およびHFを用いて高温下で分解した後、2段階のカラム分離でRuの精製とMoの同時回収を行い、TIMSによりRu同位体分析を行う。試料からのRu回収率を確認、TIMS測定により得られた同位体比とその繰り返し再現性について先行研究と比較し、本研究の手法を評価する。また、測定試料数を増やしたうえで、試料から同時分離したMoの同位体分析も行い、得られたRuおよびMo同位体比を用いて炭素質コンドライトの核合成起源同位体異常を考察し、隕石母天体の形成過程についての議論を行う。炭素質コンドライトの同一溶液から分離したRu、Moの同位体比を用いて二次元プロット図を作成し、核合成起源同位体異常についての考察を従来よりも精密に行うことで、NC-CC各領域における物質進化の研究が前進することが期待される。
References: [1] Worsham et al. (2019). EPSL, 521, 103-112. [2] Fischer-Gödde & Kleine (2017). Nature, 541, 525-527. [3] Worsham & Kleine (2021). Sci Adv, 7, eabh2837. [4] Bermingham et al. (2016). IJMS, 403, 15-26. [5] Fischer-Gödde et al. (2015). GCA, 168, 151-171.
