講演情報

[SMP31-P02]領家帯和束地域に産するホルンフェルスの微細構造を用いた広域変形時期の制約

*齊藤 大晃1、河上 哲生1、東野 文子1 (1.京都大学)

キーワード:

領家帯、ホルンフェルス、変形、接触変成

領家帯は白亜紀のフレアアップイベント時に形成された深成岩および変成岩が東西約800 kmにわたって分布する高温低圧型の変成帯であり,パルス状の火成活動がその形成に寄与したと考えられている[1]。領家帯の形成には複数の変形イベントが関与しており[2],主として柳井地域や三河地域で変形タイミングの制約がなされてきた[2-5]。和束-笠置地域には領家帯の深成岩類,変成岩類が広く分布し,変形および深成変成履歴を検討する上で適した地域である。
木津川以北の和束地域に産する変成岩類の変成度は北から南へと上昇する。また,全体として東西走向の片理面を持ち,変成泥岩中の砂岩およびチャートクラストは片理面内で延性変形している[6]。変成チャート中の放散虫化石にも変形が認められる一方で,美濃-丹波帯に産する放散虫化石は変形していない[7]。マイロナイト形成期であるD2変形および正立褶曲形成期であるD3変形による変形構造は観察されないことから,本地域の片理面は付加時ではなく片理形成の変形であるD1変形により形成されたと考えられている[6]。
花崗岩の周囲の変成岩類は接触変成作用を被っており[8],菫青石や紅柱石の斑状変晶が生じている。また,これらのホルンフェルス中の片理面は概ね東西走向のトレンドを有することから,D1変形によって形成されたと考えられる。そこで斑状変晶と片理の関係から、和束地域における花崗岩の貫入と片理を形成した変形の前後関係の制約を試みた。接触変成作用のタイミングは花崗岩の貫入と同時期と考えられるため,本研究では花崗岩類の閃ウラン鉱およびトール石のU-Th-total-Pb年代[9]を接触変成の年代とした。
大峰花崗閃緑岩による接触変成を受けた泥質ホルンフェルス中では仮像化した菫青石斑状変晶および白雲母斑状変晶の周囲で黒雲母や炭質物の配列で定義される片理が湾曲する。また,これらの斑状変晶の内部へと外部片理が連続している場合がある。木屋花崗岩による接触変成で生じた泥質ホルンフェルスでも,紅柱石斑状変晶の周囲で片理の湾曲が認められ,紅柱石中に包有される黒雲母の配列は面構造と斜交する。さらに,紅柱石中にマトリクスが入り込んでいるように見える組織も観察された。これらのことから,大峰花崗閃緑岩(ca. 104 Ma)と木屋花崗岩(ca. 98 Ma)の貫入はD1変形の最中に生じたことが示唆される。
柳生花崗岩周囲の泥質ホルンフェルスについては,菫青石斑状変晶中に包有される黒雲母と白雲母の配列および白雲母斑状変晶に包有される炭質物の配列は片理に平行である。マトリクスの片理はこれらの斑状変晶周囲で湾曲せず,プレッシャーシャドウの発達も認められない。したがって,ポストテクトニックな斑状変晶の成長が示唆される。
以上のことから,和束地域では大峰花崗閃緑岩の貫入(ca. 104 Ma)以前にD1変形が開始し,柳生花崗岩の貫入前まで継続したと考えられる。柳生花崗岩は加太花崗閃緑岩と連続した花崗岩体と考えられているため [e.g. 10],同一の結晶化年代を仮定して加太花崗閃緑岩の固結年代[11]を用いると,D1変形は約80 Ma以前まで継続した可能性がある。今後,同地域の花崗岩類に対してジルコンのU-Pb年代測定を実施し,D1変形のタイミングをより正確に決定する必要がある。

引用文献
[1] Okudaira et al. (2024). Elements, 20, 96-102.
[2] Okudaira et al. (2001). Island Arc, 10(2), 98-115.
[3] Adachi & Wallis (2008). Island Arc, 17(1), 41-56,
[4] Skrzypek et al. (2016). Lithos, 260, 9–27.
[5] Kawakami et al. (2022). Island Arc, 31(1), e12454.
[6] Okudaira et al. (2009). Journal of Asian Earth Sciences, 35, 34–44.
[7] Okudaira et al. (2010). Tectonophysics, 492(1-4), 141-149.
[8] Ozaki et al. (2000). Geol. Surv. Japan, 162p.
[9] Yokoyama et al. (2016). Mem Natl Museum Nat Sci, 51, 1–24.
[10] Kawabe et al. (1996). Geol. Surv. Japan, 99p.
[11] Higashino et al. (2025). Island Arc, 34(1), e70022.