講演情報
[SMP31-P03]ブータンヒマラヤに産する優白質花崗岩の変形・流体活動履歴の解明に向けたジルコン内部組織の観察
*上島 大地1、河上 哲生1、谷 健一郎2、東野 文子1、Rinzin Sonam3、Dorji Ugyen3 (1.京都大学大学院理学研究科、2.国立科学博物館理学研究部地学研究グループ、3.ブータン王国エネルギー天然資源省)
キーワード:
ブータンヒマラヤ、優白質花崗岩、動的再結晶、珪線石、ジルコン
ヒマラヤ山脈は東西2000 km以上の延長を持つ現在進行形の大陸衝突帯であり、造山運動を理解するうえで極めて重要な研究対象である。ヒマラヤ地域では、高度変成岩類からなる Greater Himalaya Sequence(GHS)が、正断層である South Tibetan Detachment System(STDS)と、低角逆断層である Main Central Thrust(MCT)に挟まれる形で分布している。GHSの構造的上位には弱変成~未変成のTethyan Himalaya Sequence(THS)、構造的下位には 低~中変成度のLesser Himalaya Sequenceが位置し、STDS付近には優白質花崗岩が貫入している。こうした特徴的な地質構造を説明するため、これまでに複数の造山モデルが提案されており、代表的なものとして Channel Flow Model や Critical Wedge Taper Model が挙げられる。これらのモデルにおいて、GHSとTHSの境界をなすSTDSは重要な役割を果たし、その活動年代の制約のために優白質花崗岩の貫入年代が活用される[1]。
本研究では、ブータンヒマラヤの異なる地質帯に貫入する4つの花崗岩体(Jomolhari、Dolam Kencho、Dochu La、Trashigang)から採取した計15試料について詳細な岩石記載を行い、岩体ごとに岩石組織とジルコン内部組織の比較を行った。Jomolhariの花崗岩体は、THSとGHSの境界に貫入するシルである[2]。Dolam Kenchoの花崗岩体は、STDlの下盤側のGHSに貫入する岩体である。Dochu Laの花崗岩体は、GHSの内部に貫入する岩体である。Transhigangの花崗岩体は、STDlに囲まれるTHSクリッペの内部に産する花崗岩である。その結果、全ての岩体の試料において、石英に粒界移動再結晶(Grain Boundary Migration:GBM)に特徴づけられる組織が観察され、定置後に固体状態で延性変形を被ったことが明らかとなった。[3]に従うと、これらの岩体は約500~600℃の条件下で延性変形を受けたことが示唆される。また、JomolhariとDolam Kencho に産する優白質花崗岩の一部試料では、珪線石+白雲母がマット状にマトリクスの結晶粒界を埋める。この組織は、珪線石安定領域下での流体活動の存在を示唆する。
これらの岩体のジルコンの内部組織を観察すると、Jomolhari岩体、Dolam Kencho岩体およびTrashigang岩体のジルコンは、自形を呈し、一部オシラトリーゾーニングを示すものの、CL像で溶解再沈殿作用の影響を示唆する多孔質な部分がその組織を置換している様子が観察される。すなわち、これらの岩体では流体活動の影響によるジルコンの再結晶化が示唆される。一方、Dochu La岩体のジルコンは、自形を呈し包有物は多数見られるものの、CL像でオシラトリーゾーニングを示し、マグマ起源と考えられる。今後は、これらのジルコンの年代測定を行い、優白質花崗岩の定置と変形の年代を制約する予定である。
引用文献
[1] Liu et al., 2017 Tectonophysics
[2] Kellet et al., 2009 Lithosphere
[3] Stipp et al., 2002 Geological Society, London, Sp. Pub.
本研究では、ブータンヒマラヤの異なる地質帯に貫入する4つの花崗岩体(Jomolhari、Dolam Kencho、Dochu La、Trashigang)から採取した計15試料について詳細な岩石記載を行い、岩体ごとに岩石組織とジルコン内部組織の比較を行った。Jomolhariの花崗岩体は、THSとGHSの境界に貫入するシルである[2]。Dolam Kenchoの花崗岩体は、STDlの下盤側のGHSに貫入する岩体である。Dochu Laの花崗岩体は、GHSの内部に貫入する岩体である。Transhigangの花崗岩体は、STDlに囲まれるTHSクリッペの内部に産する花崗岩である。その結果、全ての岩体の試料において、石英に粒界移動再結晶(Grain Boundary Migration:GBM)に特徴づけられる組織が観察され、定置後に固体状態で延性変形を被ったことが明らかとなった。[3]に従うと、これらの岩体は約500~600℃の条件下で延性変形を受けたことが示唆される。また、JomolhariとDolam Kencho に産する優白質花崗岩の一部試料では、珪線石+白雲母がマット状にマトリクスの結晶粒界を埋める。この組織は、珪線石安定領域下での流体活動の存在を示唆する。
これらの岩体のジルコンの内部組織を観察すると、Jomolhari岩体、Dolam Kencho岩体およびTrashigang岩体のジルコンは、自形を呈し、一部オシラトリーゾーニングを示すものの、CL像で溶解再沈殿作用の影響を示唆する多孔質な部分がその組織を置換している様子が観察される。すなわち、これらの岩体では流体活動の影響によるジルコンの再結晶化が示唆される。一方、Dochu La岩体のジルコンは、自形を呈し包有物は多数見られるものの、CL像でオシラトリーゾーニングを示し、マグマ起源と考えられる。今後は、これらのジルコンの年代測定を行い、優白質花崗岩の定置と変形の年代を制約する予定である。
引用文献
[1] Liu et al., 2017 Tectonophysics
[2] Kellet et al., 2009 Lithosphere
[3] Stipp et al., 2002 Geological Society, London, Sp. Pub.
