講演情報
[U09-P01]都市域の地盤地質と災害リスク: あなたの家の地下には何がありますか?
*竹下 徹1 (1.パシフィックコンサルタンツ(株)・国土基盤事業本部 顧問)
キーワード:
都市域の地盤地質と災害リスク、災害リスクリテラシー、災害の発生メカニズム、地震災害、道路陥没、土石流
日本列島は国土の約70%が山地・丘陵のため、人口の約80%は国土のわずか4分の1を占める標高0〜100mの台地(河岸段丘)・低地に集中している。このため、人口の集中する都市域にどのような自然災害・地盤災害リスクが存在するのか、また、それに備えるためには何をすれば良いのか日頃から考えておくことは重要である。しかし、先の東北地方太平洋沖地震で多くの方が津波によって亡くなられたことを考える時、災害リテラシーがいまだに国民に十分普及しているとは言い難い。したがって、本講演では応用地質学者は当たり前のように知っている都市域の地盤地質と災害リスクについて、今一度それらを整理し、市民が理解・共有出来るレベルの情報リソースを作ることを目指したい。
防災においてまず重要なことは、災害の発生メカニズムを理解することであり、その理解なしには十分な防災対策は講じられない。例えば、国土交通省のホームページで液状化の項に「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」があるが、この図では自然堤防は後背湿地よりも液状化の発生傾向が高いと示されている。しかし、これを理解するためには洪水時の河川による砕屑物の運搬・堆積や、後で述べる砂地盤と泥地盤の物理的性質の違いと言う理学的な知識が必要となる。同様に、多様な都市域の地盤地質と災害リスクについても、災害の発生メカニズムの理解が防災には欠かせない。本講演では、地震災害、道路陥没および土石流についてその発生メカニズムを述べる。
都市域の地盤災害はその地質に強く影響されるため、まず都市域の表層地盤がどのような地質から構成されているかを知る必要がある。古い地質時代に形成された山地と異なり、都市が乗っている台地・低地は、第四紀(約250万年前以降から現在)に堆積した未固結堆積物から成る。兵庫県南部地震では、神戸の海岸沿いで幅約1〜2km、長さ約20kmの帯状地域で震度7が観測され震災の帯として注目されたが、その発生は厚く堆積した第四紀層で地震波が増幅されたためであることが明らかになった。一般に、地震で強く揺らされる軟弱地盤は、低地の地下を構成する沖積層(約1〜2万年前の縄文海進以降に堆積した河川堆積物や海浜堆積物)である。この内、泥層と砂礫層に分けて震度を見て見ると、例えば兵庫県南部地震の場合、表層0〜5mで泥層が卓越するほどN値が低く(N<5)、震度も大きい(石川ほか, 2000, 第四紀研究)。逆に、地震災害で重要な液状化は、地盤の透水性に強く支配されるので透水性の高い砂層で起こりやすく、泥層で起こりにくい。一方、同じ第四紀層であっても台地を構成する洪積層(約250万年前以降で1〜2万年以前の地層)は、沖積層に比べて地盤が強固で、地震や地盤沈下、液状化リスクが低いため、住宅地として優良な地盤とされている。液状化と近似する現象として、例えば最近、埼玉県八潮市で起こった道路陥没がある。陥没の原因は、地下にある下水道管が腐食して破損し、その空洞から道路を支えていた土砂が流出したことにある。しかし、道路地下の地盤が、縄文海進により低地に侵入して来た海に堆積したシルト質細砂層からなり、この層が軟弱地盤(N<5)で透水性が比較的高く流失しやすかったことが重要である。最後に、都市域で人口が増えて行くと、山地・丘陵地の境界まで宅地開発が行われる。そこでは、切土・盛り土による地盤リスクが生じるほか、集中豪雨によって生じる土石流被害が生じる可能性がある。
防災においてまず重要なことは、災害の発生メカニズムを理解することであり、その理解なしには十分な防災対策は講じられない。例えば、国土交通省のホームページで液状化の項に「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」があるが、この図では自然堤防は後背湿地よりも液状化の発生傾向が高いと示されている。しかし、これを理解するためには洪水時の河川による砕屑物の運搬・堆積や、後で述べる砂地盤と泥地盤の物理的性質の違いと言う理学的な知識が必要となる。同様に、多様な都市域の地盤地質と災害リスクについても、災害の発生メカニズムの理解が防災には欠かせない。本講演では、地震災害、道路陥没および土石流についてその発生メカニズムを述べる。
都市域の地盤災害はその地質に強く影響されるため、まず都市域の表層地盤がどのような地質から構成されているかを知る必要がある。古い地質時代に形成された山地と異なり、都市が乗っている台地・低地は、第四紀(約250万年前以降から現在)に堆積した未固結堆積物から成る。兵庫県南部地震では、神戸の海岸沿いで幅約1〜2km、長さ約20kmの帯状地域で震度7が観測され震災の帯として注目されたが、その発生は厚く堆積した第四紀層で地震波が増幅されたためであることが明らかになった。一般に、地震で強く揺らされる軟弱地盤は、低地の地下を構成する沖積層(約1〜2万年前の縄文海進以降に堆積した河川堆積物や海浜堆積物)である。この内、泥層と砂礫層に分けて震度を見て見ると、例えば兵庫県南部地震の場合、表層0〜5mで泥層が卓越するほどN値が低く(N<5)、震度も大きい(石川ほか, 2000, 第四紀研究)。逆に、地震災害で重要な液状化は、地盤の透水性に強く支配されるので透水性の高い砂層で起こりやすく、泥層で起こりにくい。一方、同じ第四紀層であっても台地を構成する洪積層(約250万年前以降で1〜2万年以前の地層)は、沖積層に比べて地盤が強固で、地震や地盤沈下、液状化リスクが低いため、住宅地として優良な地盤とされている。液状化と近似する現象として、例えば最近、埼玉県八潮市で起こった道路陥没がある。陥没の原因は、地下にある下水道管が腐食して破損し、その空洞から道路を支えていた土砂が流出したことにある。しかし、道路地下の地盤が、縄文海進により低地に侵入して来た海に堆積したシルト質細砂層からなり、この層が軟弱地盤(N<5)で透水性が比較的高く流失しやすかったことが重要である。最後に、都市域で人口が増えて行くと、山地・丘陵地の境界まで宅地開発が行われる。そこでは、切土・盛り土による地盤リスクが生じるほか、集中豪雨によって生じる土石流被害が生じる可能性がある。
