講演情報
[U11-06]滋賀石筍を用いた晩氷期~完新世における古気候変動と人類史への影響★招待講演
*倉本 和佳1、池田 昌之1、狩野 彰宏1、Shen Chuan-Chou2、Huang Chun-Yuan2、佐久間 杏樹1、阿部 勇治3 (1.東京大学、2.台湾大学、3.多賀町立博物館)
キーワード:
石筍、退氷期、酸素安定同位体比、U-Th年代測定、古気候変動、縄文時代
約1.7-1.0万年前の最終氷期~完新世では,激しい気候変動が世界的に起きた.この時期は考古学的にも重要であり,人類史上最初の農耕や定住生活が始まった.気候変動が人類に与えた影響の評価のためには,人間が住んでいた中緯度陸域の古環境復元が必要である.福井県水月湖の堆積物に保存される花粉群集変化を用いた古気温復元によると,1.5万年前の急激な温暖化がグリーンランドに先行していた.さらに、西アジアで世界最古の農耕が始まった1.1万年前は、水月湖の古気温は振幅が小さく安定していたことが指摘された(Nakagawa et al., 2021).しかし,復元された気温の妥当性の検証には,生物応答と独立した分析手法に基づく高解像度地質記録が必要である.本発表では,水月湖から南東50 kmにある滋賀県東部の洞窟“河内風穴”で採取された全長約95 cmの石筍KK-2に対して,酸素同位体比(δ18O)の測定を行った結果を報告する.国立台湾大学HISPEC研究所で高精度U-Th年代測定を行い,最終氷期~晩氷期にかけて2σ<1%の高精度年代モデルを構築した.約10年解像度のδ18O記録は水月湖花粉群集に基づいて復元された気温変動とおおよそ類似した変動を示した.一方で,日本の縄文社会で定住化が起きた約1.3万年前や植物栽培が開始した約1.1万年前には,共にδ18Oが低下し,温暖な環境へと変化したことを示した.このことは,人間社会の安定には気候の変動性よりも平均的な気候場の温暖化が重要である可能性を示唆する.
