講演情報
[U11-P19]樹木年輪セルロースから検出する東アジアにおける核実験由来放射性炭素の特徴
*阪本 昂平1、坂下 渉2、宮入 陽介1、阿瀬 貴博1、宮島 利宏1、横山 祐典1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.森林総合研究所)
キーワード:
セルロース、放射性炭素同位体、大気圏内核実験、モデル
大気圏内核実験以降の放射性炭素(14C)較正曲線は、Bombピークと呼ばれる急峻なスパイクを特徴とするため、世界中から取得された大気および樹木年輪セルロース中の放射性炭素同位体比(D14C)をもとに整備がなされ、環境トレーサーとして広く利用されている。指標として使用される地域別のD14C較正曲線は、観測データに見られるD14Cの緯度勾配に基づいて提供され、収束帯やジェット気流の蛇行などの大気循環要素を踏まえた細分化がなされている。しかし、東アジア地域では、Bombピークを捉えている大気D14Cデータの不足から、その境界位置の検証がいまだ不十分である。特に、冬から春に強化される東アジア上空の寒帯前線ジェット気流は、大気核実験由来のD14Cの主な流入源である成層圏と対流圏間での交換速度に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、その影響は評価されていない。
そこで本研究では、NH2に属する九州(熊本)のヒノキ(Chamaecyparis obtusa)および中部地方中部(木曽)のサワラ(Chamaecyparis pisifera)試料から樹木年輪セルロース中のΔ14Cを取得した。樹木年輪セルロースのΔ14Cは、当年炭素を同化する時期に加え、前年以前に固定された非構造性炭水化物(NSC)等の要因により、同一年の大気Δ14Cを直接反映しない場合がある。そこで、炭素安定同位体比(δ13C)の年変動と月別日照時間の年変動との相関解析を実施することで気候応答を評価し、炭素の同化時期を検証した。これにより、樹木年輪セルロース中のD14Cの測定結果から混合・季節性に由来するΔ14Cの影響を分離することで、東アジアの大気D14CとNH2大気Δ14Cとを比較した。さらに、NSC動員および季節性に起因する混合の効果を補正するため、大気Δ14CがセルロースΔ14Cへ反映される同化過程を記述するモデルを構築し、観測されたセルロースΔ14Cから同化による影響を分離することで、東アジアの大気Δ14CとNH2大気Δ14Cとの差異を評価した
δ13Cの気候応答評価では、木曽サワラおよび熊本ヒノキでそれぞれ4–6月および3–5月の3ヶ月平均日照時間と有意な正相関が確認され、これはモデル結果から推定された光合成時期・成長時期と整合的であった。これは、セルロース形成には当年春の光合成で取り込まれた炭素が主として利用されることを示唆する。一方で、最適化されたNH2大気Δ14C同化モデル結果、および熊本ヒノキ・木曽サワラの測定値はいずれも、Bombピークの立ち上がりに相当する1963年に夏のNH2平均と比べて100‰以上低い値を示し、前年の低Δ14C大気を取り込んだストレージカーボンの影響も示唆された。
さらに、モデルによって同化の影響を補正した東アジアΔ14Cは、NH2大気Δ14Cに比べ、1959年および1963年を中心に二峰性のピークを示した。これらのピークはいずれも北半球の大気核実験ピークから1年遅れで反応しており、春季の東アジア上空で強化される寒帯前線ジェット気流に伴う対流圏・成層圏交換により、前年度の核実験由来14Cが高感度で観測されている可能性がある。本研究で得られた知見は、1950年代以降の東アジア地域における14C較正曲線の地域境界のアップデートの際に役立つと思われる。
そこで本研究では、NH2に属する九州(熊本)のヒノキ(Chamaecyparis obtusa)および中部地方中部(木曽)のサワラ(Chamaecyparis pisifera)試料から樹木年輪セルロース中のΔ14Cを取得した。樹木年輪セルロースのΔ14Cは、当年炭素を同化する時期に加え、前年以前に固定された非構造性炭水化物(NSC)等の要因により、同一年の大気Δ14Cを直接反映しない場合がある。そこで、炭素安定同位体比(δ13C)の年変動と月別日照時間の年変動との相関解析を実施することで気候応答を評価し、炭素の同化時期を検証した。これにより、樹木年輪セルロース中のD14Cの測定結果から混合・季節性に由来するΔ14Cの影響を分離することで、東アジアの大気D14CとNH2大気Δ14Cとを比較した。さらに、NSC動員および季節性に起因する混合の効果を補正するため、大気Δ14CがセルロースΔ14Cへ反映される同化過程を記述するモデルを構築し、観測されたセルロースΔ14Cから同化による影響を分離することで、東アジアの大気Δ14CとNH2大気Δ14Cとの差異を評価した
δ13Cの気候応答評価では、木曽サワラおよび熊本ヒノキでそれぞれ4–6月および3–5月の3ヶ月平均日照時間と有意な正相関が確認され、これはモデル結果から推定された光合成時期・成長時期と整合的であった。これは、セルロース形成には当年春の光合成で取り込まれた炭素が主として利用されることを示唆する。一方で、最適化されたNH2大気Δ14C同化モデル結果、および熊本ヒノキ・木曽サワラの測定値はいずれも、Bombピークの立ち上がりに相当する1963年に夏のNH2平均と比べて100‰以上低い値を示し、前年の低Δ14C大気を取り込んだストレージカーボンの影響も示唆された。
さらに、モデルによって同化の影響を補正した東アジアΔ14Cは、NH2大気Δ14Cに比べ、1959年および1963年を中心に二峰性のピークを示した。これらのピークはいずれも北半球の大気核実験ピークから1年遅れで反応しており、春季の東アジア上空で強化される寒帯前線ジェット気流に伴う対流圏・成層圏交換により、前年度の核実験由来14Cが高感度で観測されている可能性がある。本研究で得られた知見は、1950年代以降の東アジア地域における14C較正曲線の地域境界のアップデートの際に役立つと思われる。
