講演情報

[U17-P06]Reproduction of South Coast Low-Pressure Systems Using Machine Learning Models

*小森 雄一郎1、山崎 一哉2、高野 雄紀3、三浦 裕亮1 (1.東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻、2.東京大学 情報基盤センター、3.気象庁 気象研究所)

キーワード:

気象学、機械学習

日本の南岸を通過する南岸低気圧は、関東地方においてしばしば大雪をもたらす。これらの事例の予測は依然として困難である。なぜなら、降雪分布は総観規模の低気圧構造だけでなく、メソスケールの寒気滞留、地上気温、さらには地形効果にも強く依存するからである。本研究では、機械学習型全球天気予測モデルが南岸低気圧に伴う降雪事例をどの程度再現できるかを評価し、その発達に有利な大気場の条件を検討する。

代表的な南岸低気圧による降雪事例を対象に、GraphCast、AIFS、Pangu-Weatherなどの主に3つの機械学習モデルを用いて既存の数値予報モデルとも比較することで解析を行った。予測は再解析データを初期値として最大120時間まで積分した。モデルの性能は、低気圧のトラッキング、上空トラフの位置、前線構造、地上気温、降水分布などの観点から評価した。

すべてのモデルは、事例における総観規模の特徴を概ね良好に再現した。特に、本州南岸に沿った低気圧の進路や上部対流圏のトラフ位置は適切に捉えられていた。海面気圧分布の時間発展や前線の大局的な構造も再解析と整合的であった。これらの結果は、機械学習モデルが総観規模の傾圧発達過程を効果的に表現できることを示している。

一方で、メソスケールおよび地表付近の場には顕著な差異が見られた。関東平野における寒気の滞留、地上気温分布、局地的な降水強度は再解析と大きく異なっていた。いくつかの事例では、降雪域が過小評価されたり、位置がずれたりする傾向が確認された。これらの結果は、総観規模の構造は良好に再現される一方で、メソスケール過程や地形依存的な量の再現は依然として難しいことを示唆している。

さらに、南岸低気圧による降雪に有利な環境条件を調べるため、感度実験を実施した。まず、気候平均場に摂動を与えた初期値で機械学習モデルを実行した。その結果、低気圧は南岸沿いではなく日本の東方で発達する傾向が見られ、平均場からの小さな偏差だけでは典型的な南岸低気圧の発生には不十分であることが示された。次に、複数の南岸低気圧事例から作成した合成平均場を初期値として与えた。この場合、低気圧の強度は実際の事例よりも弱くなる傾向があったものの、南岸前線の構造は再現された。

本研究の最終的な目的は、どのような大規模大気場が降雪を伴う南岸低気圧の形成に有利であるのかを明らかにするとともに、各機械学習モデルがそれらの過程をどのように表現しているのかを比較することである。比較解析の結果、低気圧強度の発達過程、降水応答、初期摂動に対する感度においてモデル間に差異が確認された。これらの特性を理解することは、データ駆動型天気予測の高度化と関東地方における大雪事例の力学的要因の解明に寄与すると期待される。