講演情報
[P-65]口腔顔面神経障害性疼痛発症に対する三叉神経節-三叉神経脊髄路核吻側亜核経路の関与
*井手 唯李加1、李 淳1、岡田 真治1、西浦 英亀1、山崎 彰啓1、新田 栄治1、飯沼 利光1 (1. 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座)
【目的】
近年,三叉神経脊髄路核尾側亜核に加えて三叉神経脊髄路核吻側亜核(Vo)にも侵害受容ニューロンの存在が報告された1).口腔顔面の神経障害性疼痛発症にVoニューロンが関与する可能性が考えられるが,その役割は不明である.本研究では,口腔顔面の神経障害性疼痛発症に対する三叉神経節(TG)-Vo経路の役割を解明するために眼窩下神経部分結紮(PNL)モデルラットを用いた.
【方法】
眼窩下神経を剖出し,神経束1/3を部分結紮したラットをPNL群,剖出のみ施行したラットをsham群とした。①口髭部皮膚の機械逃避閾値(MHWT)の測定,②Vo破壊後およびVo投射TG(TG-Vo)ニューロンにチャネルロドプシン(chR2)を発現させTGの青色光刺激後におけるMHWT測定,③Voニューロン活動の応答特性解析,④TRPA1作動薬投与に対するTG-VoニューロンへのCa2+流入変化の解析,⑤TG-VoニューロンにおけるCGRP,TRPA1およびIB4発現の解析
【結果と結論】
PNL群はsham群と比べMHWTが有意に低下した.PNL群のMHWT低下はVoの破壊により回復した.chR2発現TG-Voニューロンへの光刺激によりMHWTの有意な低下を認めた.Voニューロンはsham群に比べ、PNL群で有意に高いスパイク応答を示した.この応答性の増強は口髭部へのTRPA1阻害薬投与で減弱した.PNL群はsham群と比べTRPA1作動薬投与に対して有意に高いCa2+応答を示した.PNLによりCGRPおよびTRPA1陽性TG-Voニューロン数が有意に増加した. 一方,IB4陽性ニューロン数は両群間で差を認めなかった.
以上から,三叉神経損傷によりTG-VoニューロンにおけるCGRPおよびTRPA1の発現が増加し,このTGに発現したTRPA1が神経終末部に運ばれ,さらにTG-Voニューロン活動が亢進することによって,損傷神経支配領域に痛覚過敏が誘導される可能性が示された.
【参考文献】
1)Luccarini P, Cadet R, Duale C et al. Effects of lesions in the trigeminal oralis and caudalis subnuclei on different orofacial nociceptive responses in the rat. Brain research 1998; 79-85.
近年,三叉神経脊髄路核尾側亜核に加えて三叉神経脊髄路核吻側亜核(Vo)にも侵害受容ニューロンの存在が報告された1).口腔顔面の神経障害性疼痛発症にVoニューロンが関与する可能性が考えられるが,その役割は不明である.本研究では,口腔顔面の神経障害性疼痛発症に対する三叉神経節(TG)-Vo経路の役割を解明するために眼窩下神経部分結紮(PNL)モデルラットを用いた.
【方法】
眼窩下神経を剖出し,神経束1/3を部分結紮したラットをPNL群,剖出のみ施行したラットをsham群とした。①口髭部皮膚の機械逃避閾値(MHWT)の測定,②Vo破壊後およびVo投射TG(TG-Vo)ニューロンにチャネルロドプシン(chR2)を発現させTGの青色光刺激後におけるMHWT測定,③Voニューロン活動の応答特性解析,④TRPA1作動薬投与に対するTG-VoニューロンへのCa2+流入変化の解析,⑤TG-VoニューロンにおけるCGRP,TRPA1およびIB4発現の解析
【結果と結論】
PNL群はsham群と比べMHWTが有意に低下した.PNL群のMHWT低下はVoの破壊により回復した.chR2発現TG-Voニューロンへの光刺激によりMHWTの有意な低下を認めた.Voニューロンはsham群に比べ、PNL群で有意に高いスパイク応答を示した.この応答性の増強は口髭部へのTRPA1阻害薬投与で減弱した.PNL群はsham群と比べTRPA1作動薬投与に対して有意に高いCa2+応答を示した.PNLによりCGRPおよびTRPA1陽性TG-Voニューロン数が有意に増加した. 一方,IB4陽性ニューロン数は両群間で差を認めなかった.
以上から,三叉神経損傷によりTG-VoニューロンにおけるCGRPおよびTRPA1の発現が増加し,このTGに発現したTRPA1が神経終末部に運ばれ,さらにTG-Voニューロン活動が亢進することによって,損傷神経支配領域に痛覚過敏が誘導される可能性が示された.
【参考文献】
1)Luccarini P, Cadet R, Duale C et al. Effects of lesions in the trigeminal oralis and caudalis subnuclei on different orofacial nociceptive responses in the rat. Brain research 1998; 79-85.