講演情報

[WS1-3]大腸内視鏡的粘膜下層剥離術における2種類のハサミ型ナイフの有効性:後方視的比較研究

吉田 直久1, Jianhua Shen1, 小林 玲央1, 井上 健1, 冨田 侑里2, 稲田 裕3, 稲垣 恭和4 (1.京都府立医科大学消化器内科, 2.康生会武田病院消化器内科, 3.京都第一赤十字病院消化器内科, 4.西陣病院消化器内科)
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背景:内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)において,ハサミ型ナイフは安全な器具として普及している.本研究では大腸ESDにおいてハサミ型ナイフであるクラッチカッター(CC,富士フイルム)とSBナイフJr2(SB,SB-Kawasumi)の有効性を検討した.
 方法:本研究は単施設後方視的研究である.対象は2020年1月から2021年8月までにCCで治療されたESD178例と,2021年9月から2023年12月までにSBで治療された91例とした.両群を傾向スコアマッチングにより背景因子を整え,ESD施行時間,一括切除率,術中出血頻度,合併症などの治療成績を各群で分析した.また長いESD施行時間(≧90分)の危険因子についても検討した.
 結果:マッチングの結果,各群87例が解析された.ESD施行時間(min,median[IQR])はCC群とSB群で有意差はなかった(54[36-72]vs. 53[39-72],p=0.99).さらに,一括切除率(100% vs. 100%,p=1.0),術中穿孔(1.1% vs. 1.1%,p=1.0),術後穿孔(0.0% vs. 1.1%,p=1.00),術後出血(1.1% vs. 0.0%,p=1.00)にも差異はなかった.なお術中出血頻度には有意差があった(平mean±SD:1.8±2.6 vs 3.0±3.5,p<0.01).CCまたはSBで治療された患者における長いESD施行時間延長の有意な危険因子(オッズ比[95%CI])は,抗血小板薬(7.51[1.82-31.00]),大きな病変サイズ(1.08[1.05-1.12]),高度線維化(24.30[7.60-77.90]),および術中出血頻度(1.34[1.14-1.56])であった.
 結論:大腸ESDにおけるCCとSBは高い一括切除と低い合併症発生率を可能にした.CCはSBより術中出血が有意に少なかった.