講演情報

[WS1-7]肛門扁平上皮内病変の内視鏡的特徴に関する検討

魚住 健志1, 豊嶋 直也1, 高丸 博之1, 関口 正宇1,2, 山田 真善1, 小林 望1,2, 齋藤 豊1 (1.国立がん研究センター中央病院内視鏡科, 2.国立がん研究センター中央病院・検診センター)
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【背景】肛門扁平上皮内病変は肛門の移行帯上皮および扁平上皮領域に発生する上皮内腫瘍であり,肛門管扁平上皮癌の前駆病変として知られている.しかしながら,その希少性から内視鏡的特徴についての報告は限られており,肛門扁平上皮内病変に対する診断体系は確立していない.今回われわれは当院にて術前に拡大内視鏡を行い,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した肛門管扁平上皮内病変について検討し,内視鏡的特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】2015年1月から2024年4月までの期間に当院でESDを行い,病理組織診断にて肛門扁平上皮内病変の診断となった7例を対象に検討を行った.病理組織診断はLower Anogenital Squamous Terminology projectおよびWHO分類第5版に基づいて高異型度肛門扁平上皮内病変(HSIL)と低異型度肛門扁平上皮内病変(LSIL)に分類し,全例においてp16免疫染色を行った.
【結果】性別(男/女)は4/3例,年齢中央値56歳(31-71歳)であった.全例Herrmann線にかかるように存在しており,7例中2例は亜全周病変であった.白色光観察では白色調の乳頭状・鶏冠状隆起が3例に認められ,4例は正色調~白色調の平坦隆起を呈した.NBI併用拡大内視鏡では全例で上皮下乳頭の毛細血管が確認され,5例ではループ構造が保たれており日本食道学会分類におけるB1血管に非常に類似した形態が確認された.病理組織診断ではHSIL 4例,LSIL 1例,HSIL・LSIL混在型2例であり,免疫組織化学染色では7例中5例においてp16ブロック陽性像を認めた.平坦隆起を呈する病変はいずれも内視鏡像と病理組織の対比を行うと白色光観察,インジゴカルミン撒布像,NBI併用拡大内視鏡で病変の同定および境界診断可能であった.一方でHSIL・LSIL混在型では,乳頭状・鶏冠状を呈する隆起に一致してLSILが見られ,隆起の周囲には術前精査内視鏡で存在診断さえ困難な0-IIb病変(HSIL)が存在していた.
【結語】
稀な疾患である肛門管扁平上皮内病変を7例経験した.Herrmann線上の病変に着目することで発見されるものの,組織型や形態によっては存在診断さえ困難な症例が存在し,治療方針を検討する上で考慮する必要がある.