講演情報
[WS1-6]虫垂開口部の表在型腫瘍に対する大腸LECSを含む当院の治療戦略
熊澤 佑介1, 鈴木 桂悟1, 伊藤 はるか1, 岡嵜 惣也1, 木戸 恒陽1, 栗原 渉1, 副島 啓太1, 十倉 淳紀1, 安江 千尋1, 井出 大資1, 千野 晶子1, 五十嵐 正広1, 斎藤 彰一1, 福長 洋介2 (1.がん研有明病院下部消化管内科, 2.がん研有明病院大腸外科)
【背景】虫垂開口部での内視鏡切除は穿孔リスクが高く治療難易度が高い部位である.回盲部切除術は確実な切除である一方,腺腫やSessile serrated lesion(SSL)など非癌病変に対する治療としては侵襲が過剰な印象をもつ.当院では虫垂開口部のESD困難症例に対して腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を行っており,これまでもその有用性を報告してきた.今回,当院における虫垂開口部の粘膜内病変に対する治療戦略を紹介すると共に,各種大腸LECSの治療成績を報告する.【対象と方法】当院の治療戦略を紹介する.病変を虫垂開口部との位置関係に応じて分類し,虫垂口から離れているものをType A,虫垂口に近接しているが病変辺縁を全周で視認できるものをType B,病変が虫垂内に進展し辺縁が視認できないものをType C,虫垂口全体を覆うような病変をType DとしてType別に治療法を選択する.Type Aは通常通りの内視鏡治療を行い,Type Bはサイズに関わらずESDを,Type Cに対してはELWR(Endoscope-assisted Laparoscopic Wedge Resection)を選択する.Type Dに対してELWRかLECS-CR(Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery-Colorectal)を選択してきたが,現在はLECS-CRに代わりLesion Lifting LECS(LL-LECS)を適応としている.今回の検討では2015年5月から2024年4月の期間に施行されたLECS-CR 12例,ELWR 18例,LL-LECS 7例を対象に後方視的に治療成績を解析した.【結果】LECS-CR群/ELWR群/LL-LECS群で年齢中央値(歳)(63/57/63),平均腫瘍径(mm)(20/20/25),肉眼型は3群とも表面型が最多であった.組織診断は腺腫(5/1/1),粘膜内癌(4/5/1),SM浸潤癌(0/2/0),SSL(2/10/5)で過誤腫性ポリープがLECS-CR群で1例であった.治療成績は手術時間(分)(174/81/112),術中出血量(ml)(16.6/1.8/2.0),いずれも術中・術後にClavien-Dindo GradeIII以上の合併症はなかった.一括切除率はいずれも100%を達成したが,ELWR群でSM深部浸潤癌が1例あり追加回盲部切除を要した.【結語】各種LECS手技はTypeC,Dの治療法として安全かつ確実に一括切除が可能な治療法と考えられた.LL-LECSは開始したばかりの手技であり今後も症例数の蓄積が必要と考える.