講演情報
[WS1-4]十分なVM確保を目的とした径20-29mmの大腸cT1b癌に対するhybrid ESDの有用性
才野 正新1, 山下 賢1, 濱田 拓郎1, 森元 晋1, 西村 朋之1, 桑井 寿雄2, 岡 志郎1 (1.広島大学病院消化器内科, 2.広島大学病院消化器内視鏡医学講座)
【背景と目的】 我々は内視鏡切除後大腸 pT1b癌において,Vertical margin(VM)が500μm未満の場合に追加外科切除後の再発リスクが上昇することを報告している.今回,十分なVMを確保するという観点で,径20-29mmの大腸cT1b癌に対するhybrid ESDとconventional ESD(C-ESD)のいずれかの切除法が適しているかを検討した.
【対象と方法】 2009年8月以降に当科でESDを施行した径20-29mmのcT1b癌59例を対象とした.最後まで粘膜下層(SM)剥離を施行したC-ESD群38例,術前にhybrid ESDを計画して施行したplanned hybrid ESD(PH-ESD)群21例に分類し,以下の項目について検討した.(検討1)C-ESD群とPH-ESD群間で,臨床病理学的特徴(年齢,性別,局在,腫瘍径,肉眼型,主組織型,浸潤先進部組織型,深達度,SM浸潤距離,脈管侵襲の有無,BDの程度),治療成績(一括切除率,VM距離,VM ≥ 500μmの割合,VM1の割合,術時間,SM線維化の程度,スコープ操作性,後出血,穿孔,追加外科切除の有無,リンパ節転移の割合,再発率,平均観察期間)を比較検討した.また,肉眼型別にSM距離とVM距離を比較検討した.(検討2)全症例において,VM1症例とVM0症例間の臨床病理学的特徴と治療成績を比較検討した.
【結果】(検討1)PH-ESD群はC-ESD群と比較して,平均術時間が短く(41 min vs. 61 min),VM ≥ 500μmの割合が高かった(81.0%[17/21]vs. 47.4%[18/38]).PH-ESD群はC-ESD群と比較して,隆起型病変では切除した平均SM距離が長く(2130μm vs. 1406μm),表面型病変では切除した平均SM距離(1243μm vs. 837μm)と平均VM距離が長く(545μm vs. 302μm),VM ≥ 500μmの割合が高かった(72.7%[8/11]vs. 14.3%[2/14]).その他の臨床病理学的特徴と治療成績において,両群間に有意差を認めなかった.(検討2)PH-ESD群にはVM1症例を1例も認めなかった.VM1症例はVM0症例と比較して,腫瘍径が大きく(28.8mm vs. 23.5mm),浸潤先進部組織型がpor/sig/mucである割合(75.0%[3/4]vs. 25.5%[14/55]),穿孔率(50.0%[2/4]vs. 0%[0/55])が高かった.
【結論】 径20-29mmのcT1b癌に対するPH-ESDは術時間の短縮に有用であり,特に表面型病変においてVM ≥ 500μmの確保と,より十分な距離のSM確保に有用であった.
【対象と方法】 2009年8月以降に当科でESDを施行した径20-29mmのcT1b癌59例を対象とした.最後まで粘膜下層(SM)剥離を施行したC-ESD群38例,術前にhybrid ESDを計画して施行したplanned hybrid ESD(PH-ESD)群21例に分類し,以下の項目について検討した.(検討1)C-ESD群とPH-ESD群間で,臨床病理学的特徴(年齢,性別,局在,腫瘍径,肉眼型,主組織型,浸潤先進部組織型,深達度,SM浸潤距離,脈管侵襲の有無,BDの程度),治療成績(一括切除率,VM距離,VM ≥ 500μmの割合,VM1の割合,術時間,SM線維化の程度,スコープ操作性,後出血,穿孔,追加外科切除の有無,リンパ節転移の割合,再発率,平均観察期間)を比較検討した.また,肉眼型別にSM距離とVM距離を比較検討した.(検討2)全症例において,VM1症例とVM0症例間の臨床病理学的特徴と治療成績を比較検討した.
【結果】(検討1)PH-ESD群はC-ESD群と比較して,平均術時間が短く(41 min vs. 61 min),VM ≥ 500μmの割合が高かった(81.0%[17/21]vs. 47.4%[18/38]).PH-ESD群はC-ESD群と比較して,隆起型病変では切除した平均SM距離が長く(2130μm vs. 1406μm),表面型病変では切除した平均SM距離(1243μm vs. 837μm)と平均VM距離が長く(545μm vs. 302μm),VM ≥ 500μmの割合が高かった(72.7%[8/11]vs. 14.3%[2/14]).その他の臨床病理学的特徴と治療成績において,両群間に有意差を認めなかった.(検討2)PH-ESD群にはVM1症例を1例も認めなかった.VM1症例はVM0症例と比較して,腫瘍径が大きく(28.8mm vs. 23.5mm),浸潤先進部組織型がpor/sig/mucである割合(75.0%[3/4]vs. 25.5%[14/55]),穿孔率(50.0%[2/4]vs. 0%[0/55])が高かった.
【結論】 径20-29mmのcT1b癌に対するPH-ESDは術時間の短縮に有用であり,特に表面型病変においてVM ≥ 500μmの確保と,より十分な距離のSM確保に有用であった.