講演情報

[R1-5]当院におけるMSI-H大腸癌に対する治療成績についての検討

松中 喬之1,2, 嶋田 通明1, 田海 統之1, 澤井 利次1, 森川 充洋1, 小練 研司1, 玉木 雅人1, 村上 真1, 廣野 靖夫2, 五井 孝憲1 (1.福井大学第一外科, 2.福井大学がん診療推進センター)
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【はじめに】
MSI-HもしくはdMMR大腸癌に対する薬物療法として免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性が報告されているものの,MSI-Hの頻度は約4%と低く治療経験が乏しいのが現状である.今回,当院でのMSI-Hの有病率と,MSI-H症例に対するICIの使用を含めた治療経験について報告する.
【対象】
2019年2月~2024年3月の期間で大腸癌に対しMSI検査が施行された165例.
【方法】
1.MSI-Hの有病率,患者背景因子について検討を行った.
2.MSI-H大腸癌に対する治療成績について検討を行った.
【結果】
1.MSI-Hは164例中,5例(3.0%),MSI-H症例における平均年齢は69.0歳(58-86歳),男性3例,女性2例であった.原発巣は上行結腸2例,横行結腸3例と全例が右側結腸癌であった.他の遺伝子変異の併存についてはRAS変異が1例,BRAF変異が2例に認められた.うちBRAF遺伝子変異を伴っていた1例はpStageIII症例であった.
2.5例中,ICIを使用した4例について検討をおこなった.診断時切除不能大腸癌が3例,再発例が1例であり,いずれの症例も1次治療としてPembroが投与されていた.平均施行Kur数は6.5Kur(2~9Kur)であった.初回治療効果判定の効果についてはPR2例,SD1例,PD1例であった.BRAF変異を伴っていた1例(横行結腸癌:cT4b(胃)N3M1c2(P,LYM)cStageIVc)は,Pembro2Kur施行後PD判定となり,BRAF阻害剤を含む2次治療(cetuximab+encorafenib+binimetinib)に移行した.また,1例(横行結腸癌:cT4aN3M1c2(H2,PUL1,P1)cStageIVc)は9Kur施行後にPD判定となり,2次,3次治療に移行したが,3次治療施行中に提出した遺伝子パネル検査でNTRK融合変異を認めたため,4次治療としてentrectinibを導入した.治療開始後17ヶ月で原癌死となった.
【まとめ】
大腸癌に対するICIの使用については保険収載後期間も浅く,実臨床において今後更なる症例の蓄積が必要である.また,他の遺伝子変異を有する症例も多く,コンパニオン診断や,遺伝子パネル検査の結果も踏まえて最適な治療レジメンを選択することが重要であると考える.