講演情報

[WS1-5]直腸T1b癌に対する最適な局所切除法―PAEMとESDの比較検討―

松本 健太1, 鴫田 賢次郎2, 朝山 直樹1, 青山 大輝1, 福本 晃2, 永田 信二1 (1.広島市立北部医療センター安佐市民病院消化器内科, 2.広島市立北部医療センター安佐市民病院内視鏡内科)
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【背景と目的】近年,直腸T1b癌に対してはリンパ節転移危険因子の層別化による内視鏡治療の適応拡大や局所切除後放射線化学療法など,肛門機能温存を目的とした低侵襲治療が注目されているが,それに伴い確実な局所切除法の重要性が高まっている.一方,T1b癌に対する切除法として,粘膜下層を剥離ラインとするESDは垂直断端が陽性または不明となるリスクがあるのに対して,固有筋層の内輪筋と外縦筋の間を切除ラインとするperanal endoscopic myectomy(PAEM)では確実な垂直断端陰性切除が期待される.そこで今回,直腸pT1癌におけるPAEMの治療成績についてESDと比較検討を行った.
【方法】2013年8月から2023年11月までに,当科でESDおよびPAEMにて切除した直腸pT1b癌42病変(ESD:20病変,PAEM:22病変)を対象とし,切除法別にみた臨床病理学的特徴と治療成績について後方視的に比較検討を行った.
【結果】年齢中央値(範囲):PAEM群70(35-87)歳,ESD群72(59-83)歳,腫瘍形態(LST-G/LST-NG/Polypoid):PAEM群4/6/10,ESD群8/3/11,腫瘍径中央値(範囲):PAEM群25(10-90)mm,ESD群35(5-90)mm,粘膜下層浸潤距離中央値(範囲):PAEM群3750(1054-14000)μm,ESD群3000(1500-7000)μm,脈管侵襲陽性率:PAEM群90%(18/20),ESD群73%(16/22),簇出G2/3割合:PAEM群35%(7/20),ESD群23%(5/22)であった.切除時間中央値(範囲):PAEM群58(30-160)分,ESD群60(15-210)分であった.一括切除率:PAEM群100%(20/20),ESD群95%(21/22),完全一括切除率:PAEM群100%(20/20),ESD群77%(17/22),VM0切除率:PAEM群100%(15/15),ESD群82%(18/22)であり,PAEM群で完全一括切除率,VM0切除率が有意に高かった(p<0.05).止血術や輸血加療を要する後出血や後腹膜穿孔は両群で1例も認めず,入院期間中央値(範囲):PAEM群5(5-10)日,ESD群6(5-9)日であった.
【結語】直腸pT1b癌に対してPAEMはESDと比較して完全一括切除率とVM0切除率が有意に高かった.また重篤な偶発症を認めず,ESDと同様安全性の高い局所切除法と考えられた.