講演情報
[WS1-2]大腸腫瘍に対するポケット法を併用したUnderwater ESD:従来法より優れているか?
中島 勇貴, 根本 大樹, 冨樫 一智 (福島県立医科大学会津医療センター小腸大腸内科)
【目的】浸水下に行う大腸ESD(Underwater ESD,U-ESD)は,heat-sink効果によりPECSが減る等の利点があるとされる.U-ESDは原理的にポケット法との相性が良いと考えられ,当施設では,直近は生食浸水下に行うU-ESDを優先して行っている.この短期治療成績について従来法と比較し,安全な治療選択肢となり得るか検討した.
【方法】2013年4月から2023年10月まで当院で施行されたESD症例を対象とし,臨床試験例は除外した.ESD中断,牽引device使用,切離速度(mm2/min),術中穿孔,PECS(37.5度以上の発熱,腹痛),後出血,遅発性穿孔を評価項目とし,傾向スコアを用いた安定化逆確率重みづけ法によりU-ESD例とconventional ESD(C-ESD)例を比較した.傾向スコアの算出において,臨床病理所見・術者・術中所見などを考慮した.
【成績】403例(男59%,年令中央値73歳,抗血栓薬内服17%,病変径中央値30mm IQR 22-40mm,平坦型 47%,T1b 10%/T1a 9%/Tis 30%/腺腫45%/鋸歯状病変SSL 5%,熟練医施行97%,繊維化[F1/2]31%,筋層牽引3%)が対象となり,U-ESDは53例(13%)を占めた.ESD中断例はU-ESD 1.9% C-ESD 2.3%,一括切除率(以下,同順)は96% 97%,術中穿孔は5.7% 3.7%,PECSは17% 13%,後出血は5.7% 2.3%,遅発性穿孔0% 0%であり,いずれも有意差はなかったが,牽引device使用率はU-ESDで高く(28% vs. 10%,p<0.001),切離速度もU-ESDが遅い結果となった(13.2 vs. 16.4,p=.021).傾向スコアによる解析でも,U-ESDで牽引device使用率が高く(p=0.001)切離速度も遅かった(p<0.001).他の評価項目で有意な差を示さなかった.
【結語】中断例は若干減少したが,U-ESDの優位性を示せなかった.牽引device使用により,切離速度が遅くなる可能性が考えられた.
【方法】2013年4月から2023年10月まで当院で施行されたESD症例を対象とし,臨床試験例は除外した.ESD中断,牽引device使用,切離速度(mm2/min),術中穿孔,PECS(37.5度以上の発熱,腹痛),後出血,遅発性穿孔を評価項目とし,傾向スコアを用いた安定化逆確率重みづけ法によりU-ESD例とconventional ESD(C-ESD)例を比較した.傾向スコアの算出において,臨床病理所見・術者・術中所見などを考慮した.
【成績】403例(男59%,年令中央値73歳,抗血栓薬内服17%,病変径中央値30mm IQR 22-40mm,平坦型 47%,T1b 10%/T1a 9%/Tis 30%/腺腫45%/鋸歯状病変SSL 5%,熟練医施行97%,繊維化[F1/2]31%,筋層牽引3%)が対象となり,U-ESDは53例(13%)を占めた.ESD中断例はU-ESD 1.9% C-ESD 2.3%,一括切除率(以下,同順)は96% 97%,術中穿孔は5.7% 3.7%,PECSは17% 13%,後出血は5.7% 2.3%,遅発性穿孔0% 0%であり,いずれも有意差はなかったが,牽引device使用率はU-ESDで高く(28% vs. 10%,p<0.001),切離速度もU-ESDが遅い結果となった(13.2 vs. 16.4,p=.021).傾向スコアによる解析でも,U-ESDで牽引device使用率が高く(p=0.001)切離速度も遅かった(p<0.001).他の評価項目で有意な差を示さなかった.
【結語】中断例は若干減少したが,U-ESDの優位性を示せなかった.牽引device使用により,切離速度が遅くなる可能性が考えられた.