講演情報
[PD4-2]潰瘍性大腸炎手術におけるpouch吻合法の現状と課題
木村 英明1, 鳥谷 建一郎1, 山本 峻也1, 中森 義典1, 国崎 玲子1, 後藤 晃紀2, 黒木 博介2, 辰巳 健志2, 小金井 一隆2, 杉田 昭2, 遠藤 格3 (1.横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター, 2.横浜市立市民病院炎症性腸疾患科, 3.横浜市立大学消化器・腫瘍外科)
目的:潰瘍性大腸炎手術におけるpouch吻合法には、double-stapling techniqueによる回腸嚢肛門管吻合術(以下、IACA)と、粘膜抜去、経肛門手縫い吻合による回腸嚢肛門吻合術(以下、IAA)がおこなわれているが、各々に利点、欠点があり、明確な選択基準はない。当院におけるpouch吻合法の現状と課題について明らかにした。
方法:2007年から2023年に当科で手術をおこなった潰瘍性大腸炎446例のうち、再建術(IACAまたはIAA)をおこない回腸嚢が機能した426例を対象とした。再建術式はIACAが386例、IAAが40例。手術適応、手術分割方法、術後排便機能、回腸嚢機能不全、腫瘍発生について比較検討した。
結果:手術適応は、IACAは重症137例、難治236例、腫瘍13例、IAAは重症3例、難治6例、腫瘍31例で、IAAは主に腫瘍例におこなっていた。術中に回腸嚢が届かずに永久人工肛門とした症例はなかったが、腫瘍例の1例で回腸嚢到達困難のためIAAからIACAに変更した。
手術分割方法は、IACAは1期170例、修正2期207例、2期7例、3期2例、IAAは2期34例、3期6例であった。1期的手術、修正2期手術(人工肛門を造設しない再建)はIACAのみでおこなっていた。
術後排便機能は、IACAは1年後の排便回数8.0/day、漏便10%、便屁区別不可37%、夜間排便49%、IAAは排便回数8.5/day、漏便64%、便屁区別不可41%、夜間排便62%で、漏便がIACAで有意に少なかった。
回腸嚢機能後観察期間63ヶ月(0-208)で、IACAの7例、IAAの2例が回腸嚢機能不全で切除または人工肛門造設を要した(有意差なし)。内訳はIACAは痔瘻3、穿孔1、回腸嚢炎1、irritable pouch1、回腸嚢HGD1、IAAは痔瘻1、回腸嚢HGD1。両群とも肛門管、吻合部の癌発生例はなかった。腫瘍発生に両群間の差はなかった。
結語:IACAは、回腸嚢到達困難のリスクが少なく、人工肛門を造設しない再建が多く、術後漏便が少なかった。一方、自験例では腫瘍発生に差はなかったがリスクはあると思われる。pouch吻合法は、その特徴を理解し、適切に使い分けることが好ましい。
方法:2007年から2023年に当科で手術をおこなった潰瘍性大腸炎446例のうち、再建術(IACAまたはIAA)をおこない回腸嚢が機能した426例を対象とした。再建術式はIACAが386例、IAAが40例。手術適応、手術分割方法、術後排便機能、回腸嚢機能不全、腫瘍発生について比較検討した。
結果:手術適応は、IACAは重症137例、難治236例、腫瘍13例、IAAは重症3例、難治6例、腫瘍31例で、IAAは主に腫瘍例におこなっていた。術中に回腸嚢が届かずに永久人工肛門とした症例はなかったが、腫瘍例の1例で回腸嚢到達困難のためIAAからIACAに変更した。
手術分割方法は、IACAは1期170例、修正2期207例、2期7例、3期2例、IAAは2期34例、3期6例であった。1期的手術、修正2期手術(人工肛門を造設しない再建)はIACAのみでおこなっていた。
術後排便機能は、IACAは1年後の排便回数8.0/day、漏便10%、便屁区別不可37%、夜間排便49%、IAAは排便回数8.5/day、漏便64%、便屁区別不可41%、夜間排便62%で、漏便がIACAで有意に少なかった。
回腸嚢機能後観察期間63ヶ月(0-208)で、IACAの7例、IAAの2例が回腸嚢機能不全で切除または人工肛門造設を要した(有意差なし)。内訳はIACAは痔瘻3、穿孔1、回腸嚢炎1、irritable pouch1、回腸嚢HGD1、IAAは痔瘻1、回腸嚢HGD1。両群とも肛門管、吻合部の癌発生例はなかった。腫瘍発生に両群間の差はなかった。
結語:IACAは、回腸嚢到達困難のリスクが少なく、人工肛門を造設しない再建が多く、術後漏便が少なかった。一方、自験例では腫瘍発生に差はなかったがリスクはあると思われる。pouch吻合法は、その特徴を理解し、適切に使い分けることが好ましい。