講演情報
[VSY1-5]High risk大腸T1癌に対するESD後の長期成績〜広島GI内視鏡リサーチグループ多施設共同前向き研究
濵田 拓郎1, 桑井 寿雄2, 上垣内 由季1, 実綿 倫宏3, 永井 健太4, 田中 友隆5, 小野川 靖二6, 岡信 秀治7, 永田 信二8, 吉田 成人9, 國弘 真己10, 平賀 裕子11, 岡本 志郎12, 岡 志郎1 (1.広島大学病院消化器内科, 2.広島大学病院消化器内視鏡医学講座, 3.中国労災病院消化器内科, 4.市立三次病院消化器内科, 5.JA広島総合病院消化器内科, 6.JA尾道総合病院消化器内科, 7.広島赤十字・原爆病院消化器内科, 8.広島市立北部医療センター安佐市民病院消化器内科, 9.呉医療センター・中国がんセンター内視鏡内科, 10.広島市民病院内科, 11.県立広島病院内視鏡内科, 12.呉共済病院消化器内科)
【背景と目的】大腸cT1癌に対する切除生検目的のESDは臨床研究として施行されつつあるが,リアルワールドにおける長期的な前向きのエビデンスは十分でない。今回,大腸pT1癌に対するESD後の長期予後について、全例登録の多施設前向き研究を実施した。【方法】2014年1月から2018年1月に広島GI内視鏡リサーチグループにてESDを施行した大腸腫瘍2358症例2478病変のうち,大腸pT1癌であり,大腸癌治療ガイドライン記載の内視鏡切除後T1癌における病理学的リンパ節転移危険因子を1つ以上持ち,かつ5年以上経過を追えたHigh risk大腸T1癌281症例281病変 (平均観察期間66ヶ月) を対象とした。ESD後に追加外科切除なしで経過観察した74症例 (ER群) と,追加外科切除を施行した207症例 (SR群) の2群別に,臨床病理学的特徴,治療成績および長期予後を比較検討した。【結果】ER群はSR群と比較して平均年齢が有意に高かった (75.3歳 vs. 66.6歳; P<0.001)。R0切除率はER群がSR群と比較して有意に高く(95.1% vs. 73.7%; P<0.001),偶発症はER群9例 (後出血5例,術中穿孔4例),SR群8例 (後出血4例,術中穿孔3例,遅発性穿孔1例) に認めた。SR群はER群と比較してリンパ管侵襲陽性の割合 (40.1% vs. 19.0%; P=0.001),静脈侵襲陽性の割合 (35.8% vs. 20.3%, P=0.014) が有意に高かった。SR群における追加外科切除時の局所遺残腫瘍は12例 (5.8%) に認め,リンパ節転移陽性は25例 (12.1%) であった。再発はER群6例 (局所5例,肝臓2例,肺1例),SR群4例 (リンパ節3例,肺1例,肝臓1例) で、SR群に局所再発は認めなかった (重複あり)。原癌死はER群2例,SR群3例に認めた。ER群はSR群と比較して5年全生存率が有意に低く (79.7% vs 95.2%; P<0.001),5年累積再発率と5年累積局所再発率が有意に高かった (8.1% vs 1.9%; P=0.015,6.8% vs 0%; P<0.001)。一方,5年累積遠隔転移再発率と5年疾患特異的生存率に有意差を認めなかった。【結語】High risk大腸T1癌におけるESD後の追加外科切除は局所再発の予防に有効であったが,遠隔転移再発に関しては更なる検討が必要である。