講演情報

[VSY2-4]国産手術支援ロボットhinotori™による大腸癌手術の現状と課題 -138例の経験と直腸癌における従来機との短期成績の比較-

勝野 秀稔1,2, 諸原 浩二1, 遠藤 智美1, 中村 謙一1, 松尾 一勲1, 小出 哲也1, 今中 孝1, 久保 智裕1, 榊原 直樹1, 花井 恒一2, 守瀬 善一1 (1.藤田医科大学岡崎医療センター外科, 2.藤田医科大学ばんたね病院)
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【緒言】保険収載以降、大腸癌に対するロボット支援手術は本邦において広く普及し、国産手術支援ロボットhinotori™の臨床導入も進んでいる。教室では2023年1月より同機を導入し、結腸・直腸癌に対して適応を拡げてきた。本演題では、これまでの138例(直腸73例、結腸65例)の導入経験を通じた工夫や課題を共有し、従来機種との短期成績の比較について報告する。
【方法】hinotoriにはSealing deviceが装備されていないため、両手でバイポーラ鉗子を使用するダブルバイポーラ法を以下の場面で実施している。1)リンパ節郭清などの血管周囲の操作、2)直腸間膜の処理、3)側方リンパ節郭清。直腸癌に対するda Vinci手術209例と2024年12月末までに経験したhinotori58例を対象として、短期成績を比較検討した。2:1の傾向スコアマッチングを実施(da Vinci群108例、hinotori群54例)し、手術時間、出血量、術後合併症、在院日数、病理学的因子などの短期成績について比較検討した。
【結果】hinotori群はda Vinci群と比べ、手術時間(266分 vs 227分, P=0.014)、コンソール時間(156分 vs 110分, P=0.001)が有意に延長したが、出血量や合併症率、病理学的所見に差を認めなかった。在院日数はhinotori群で短縮傾向を示した(11日 vs 14日, P=0.002)。術者と助手のlearning curveにより、手術時間は短縮傾向にある。
【考察・結語】138例の経験を通じ、ソフトウェアの改良、ハンドクラッチ追加、フットペダル更新により操作性と効率性は向上し、安全な手術が可能となった。また、2023年9月のコンセンサスミーティングでは術式ごとのポート配置や術野展開が共有され、プロクター間での指導方針が整理された。しかしながら、Dual Console非搭載に伴う手術指導には課題が残る。今回、hinotori手術の動画を供覧し、その特長と課題を提示して、今後の普及に向けた方向性を考察する。