講演情報

[VWS2-2]肥満大腸癌手術にどう挑むか ― 腹腔鏡・ロボット・TaTMEによる戦略的アプローチ

藤本 崇聡, 田村 公二, 永吉 絹子, 水内 祐介, 吉村 晴香, 堀岡 宏平, 池永 直樹, 仲田 興平, 大内田 研宙, 中村 雅史 (九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景・目的】肥満患者に対する大腸癌手術は、視野確保や手術操作が難しく、根治性にも影響を及ぼす。当科の肥満患者への工夫や戦略を提示し、肥満が大腸癌の短期・長期成績に及ぼす影響を検討することを目的とした。
【対象・方法】当科で腹腔鏡下手術を施行した大腸癌患者1028例(2013〜2025年)。肥満は①BMI ≥ 25、②L3レベルCTでの内臓脂肪面積≥ 100 cm²、③内臓脂肪面積/内臓脂肪面積比(男性 ≥ 1.33、女性 ≥ 0.71)。各群において短期・長期成績を比較検討した。
【手術手技のポイント】砕石位で両上肢を巻き込み側面を固定した上で、マジックベッドを固定し脱落しないようにする。術野確保のため、体位は最大限傾け、小腸による視野の妨げを防止するが、それでも視野が不良な場合はエンドラクターType Jを使用する。通常以上にこまめな止血を徹底する。技術的困難さから、原則として上級医が執刀する。
右側結腸癌では後腹膜アプローチにより、肥満症例でも安全な授動と確実な郭清が可能となる。左側結腸癌では外側からの先行授動により内側アプローチでの開窓が早まり、小腸による視野の妨げを短縮できる。低位直腸癌では、経肛門操作を併用することで手術時間の短縮を図る。さらに、吻合は体腔内吻合も選択肢としている。
【結果】盲腸・上行結腸癌が283例、横行結腸癌87例、下行結腸癌50例、S状結腸癌176例、直腸S状部癌132例、直腸癌300例。肥満は、①248例(24%)②499例(49%)③543例(53%)であった。①②肥満は非肥満患者より有意に手術時間が延長し(e.g.,超低位+低位前方切除 ①380vs313 min,p=0.028;②351vs305,p=0.027;③337vs324,p=0.50)、出血量が多かったが(①50vs32ml,p=0.019;②50vs25,p=0.0009;③50vs30,p=0.15)、開腹移行率、術後在院日数、術後合併症、予後に有意差を認めなかった。症例数は少ないが、肥満・狭骨盤の直腸癌患者でロボット手術+経肛門操作を同時に行うことで、骨盤内操作時間が短縮していた。
【結語】当科の手術方針で手術時間は延長するが、安全かつ腫瘍学的根治性を損なわない手術が可能であった。