講演情報

[WS3-3]一時的回腸ストーマ造設を併施した直腸癌切除術後のoutlet obstructionの発生リスク因子の検討

佐々木 茂真1, 諏訪 勝仁1, 力石 健太郎1, 北川 隆洋1, 牛込 琢朗1, 岡本 友好1, 衛藤 謙2 (1.東京慈恵会医科大学附属第三病院外科, 2.東京慈恵会医科大学外科学講座)
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【目的】一時的回腸ストーマ造設を併施した直腸癌手術におけるstoma outlet obstruction (OO)のリスク因子について検討する。
【方法】2014年から2024年までに慈恵医大第三病院で、直腸癌に対して前方切除術および回腸ストーマ造設術を施行した73例 (OO発症群 [OO群]17例、OO非発症群 [NOO群]56例)を対象とした。OOについては腹部CTで診断し,ストーマ脚捻転や癒着性腸閉塞などの器質的原因がないものとした。OO群は全症例でストーマ開口部からのチュービングで改善し,再手術症例はなかった。腹直筋と腹壁の厚さは臍部レベルとし、ストーマ造設部位から腹直筋外縁までの距離は、ストーマ孔の最外縁から腹直筋外縁までの距離を術前術後のCTで計測した。年齢、性別、BMI、併存疾患の有無、到達方法(腹腔鏡・開腹)、術前治療の有無、手術時間、出血量、腹直筋の厚さ、腹壁の厚さ、ストーマ造設部位から腹直筋外縁までの距離を2群間で比較検討した。有意差を認めた項目については,多変量解析を行った.連続変数のカットオフ値についてはROC曲線を用いて設定した。統計学的検索には単変量解析は分布に従い、カイ二乗検定(両側)およびMann–Whitney U検定を用い,多変量解析にはロジスティック回帰分析を用い,p<0.05で有意とした。
【結果】OO群とNOO群では単変量解析で性別(p=0.028)、腹直筋の厚さ10㎜以上(p<0.001)腹壁の厚さ23.4㎜以上(p=0.039)、外縁までの距離20.4㎜未満(p=0.027)で有意差がみられた。多変量解析では腹直筋の厚さ10㎜以上(p<0.001)のみに有意差がみられた。
【結語】直腸癌に対して前方切除術と回腸ストーマ造設術を施行した症例におけるOOの発生リスク因子は、腹直筋の厚さであった。腹直筋が10mmを超える症例の一時的回腸ストーマ造設では,手術終了時にチューブを留置するなどの処置の必要性が示唆された。