講演情報
[JAHS-1-01]多様性水文科学における地域貢献と地域比較としての国際研究の展望
*小野寺 真一1 (1. 広島大学)
キーワード:
水の多様性、里水、地域水文学、地域貢献、国際比較研究
昨年の日本水文科学会学術大会において、シンポジウム「水文科学の展望」を開催し、谷口(2023)によって地域-地球および帰納―演繹という2軸により再定義された水の4つの特性をもとに、本学会の研究動向は、地域と帰納に位置づけられる「水の多様性」が中心であったと再認識できた。水の多様性は、フィールドでの現地観測データや水利用や水文化に関する聞き取り情報などの定性的データを含むとしている。ここでは、「多様性水文学」と呼び、その「地域貢献」と地域比較の視点としての「国際研究」としての役割を、私自身の経験などをベースに整理したい。 地域社会では多様なニーズを有していることから、それに対応できる水文学としての知見の蓄積と整理が必要であろう。小野寺ら(2018)は、「人手が加わることで生物多様性と生産性が高くなった沿岸海域」としての「里海」と「里山」とをつなぐ水循環系としての意味で「里水」を提唱し、地域における水の多様性と人や社会とのかかわりを示すものととらえた。里水は、対象が里山から里海までという点で流域スケールであり、人や社会とのかかわり、生態系や生物多様性、その他の資源との関連も重要である。例えば、温暖少雨で水不足問題を抱えてきた香川県では、従来からの伝統的な「ため池」や「出水」の利用が究極の再利用システムとして効率的である。また、日本三大銘酒として有名な広島県東広島市西条では、その利用する地下水を保全するため、酒蔵の利益の1%を原資として源流域の保全事業を20年以上実施してきている。この保全行動の効果の科学的検証は我々の役割である。国際研究においても、地域の多様性を明らかにするとともに比較していくことを通して、本学会でもその普遍性の追求に寄与してきたといえるだろう。例えばタンザニアでは、フィンガリングが優先する地下水涵養過程の顕著な違いがもたらす、集中的涵養機構が少ない降水量の中で一定の地下水を保持できる仕組みとして有益な知見となり、その後のアフリカ地域の気候変動影響研究にもつながっているだろう。また、インドネシア、ジャカルタでJICAの枠組みで実施された研究成果では、河川のBODが50mg/Lという顕著な汚染の現実とともに、その改良に向けての様々なアイデアにつながってきている。今後も各会員から様々なルートやアプローチによる発信とそれらの知見の蓄積に期待したい。
