講演情報

[OS-03-02]背水現象を利用した圃場への洪水導水手法の提案と再現計算による打倒性評価

*小栁 俊登1、川村 勇斗2、手計 太一3、乃田 啓吾4 (1. 中央大学大学院理工学研究科、2. 国土交通省、3. 中央大学理工学術院、4. 東京大学大学院農学研究科)
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キーワード:

洪水導水、背水、圃場、井田川流域、富山

近年、気候変動に伴う水害の激甚化に対し、流域全体で貯留・浸透を担う「流域治水」への転換が急務となっている。本研究は、広大な貯留ポテンシャルを持つ圃場に着目し、河川水位上昇時の背水現象を利用して洪水流を一時的に圃場へ導水・貯留する新たな手法を提案した。既存の「田んぼダム」が当該地域の降雨に依存する内水対策であるのに対し、本手法は河川水を直接受け入れるため、より直接的な外水対策としての機能が期待される。 
本研究では、提案手法の妥当性を検証するため、2023年7月の豪雨により浸水被害が生じた富山市富川地区(井田川流域)を対象に、平面二次元不定流計算を用いた再現計算を実施した。数値実験の精度を左右する標高データについて検討した結果、航空レーザー測量(LP1mDEM)は作物の繁茂等の影響により、実標高(RTK-GPS測量値)を5cm~60cm程度過大評価していることが判明した。そこで、本研究では圃場ごとの平均誤差に基づきLPデータを一律に減じた補正標高データを作成し、解析に用いた。 
再現計算の結果、浸水深の時系列変化は観測値の波形およびピーク時、その後の減衰過程(排水プロセス)を概ね良好に再現した。再現精度の指標であるNash-Sutcliffe係数(NSE)は、圃場水口で0.82、水尻で0.71となり、高い再現性が確認された。また、解析を通じて、排水路下流部からの浸水開始や、樋門閉鎖後の浸水域拡大といった時空間的な浸水挙動を定量的に示すことが可能となった。 
以上より、本研究で構築した数値モデルは、背水を利用した圃場への洪水導水時における浸水・排水挙動を高い精度で表現可能であり、手法の妥当性が示された。本成果は、導水に伴う農作物への影響等を懸念する営農者に対し、浸水深や湛水時間などの科学的根拠を提示するための基礎資料として有用である。今後は本モデルを活用し、広域的な河川水位低減効果の評価や、社会実装に向けた合意形成の検討を進める必要がある。