講演情報
[OS-03-03]日タイ2流域の比較分析に基づく流域治水ガバナンス障壁の構造化
*鈴木 耕平1,2、乃田 啓吾2、出村 沙代1、手計 太一3、吉田 貢士2、木口 雅司2、沖 大幹2、吉見 和紘4 (1. 株式会社たがやす、2. 東京大学、3. 中央大学、4. 富山県立大学)
キーワード:
流域治水、グラフィックファシリテーション、合意形成、SCATでの分析、国際比較
気候変動に伴う水災害の激甚化を背景に,流域全体の多主体が協働して水害リスクを低減する「流域治水」の社会実装が急務となっている.しかし,その実装を阻むガバナンス上の障壁は国・地域・文化によって大きく異なり,国際的な比較・体系化は十分に行われていない.本研究は,グラフィックファシリテーション(GF)を用いた3段階の参画型共創プロセス(事前ヒアリング→ワークショップ→事後ヒアリング)を富山県小矢部川流域(先進国農村型)とタイ北部メーサーイ川流域(開発途上国国境地帯型)に適用し,「地域固有の障壁」と「普遍的課題」の層別化を試みた。あわせて,GFが異なる立場のステークホルダー間の知識統合を促進する境界対象として機能する条件を明らかにすることを目的とする. SCAT分析の結果,「警報から保護行動への翻訳の失敗」と「空間的利害の非対称性(上流vs下流)」が両流域に共通する普遍的課題として抽出された.一方,地域固有の障壁は両流域で質的に異なった.小矢部川では,田んぼダム導入に伴う農家への労働・経済的負担の偏在と高齢化に起因する情報アクセス格差が主要な障壁であった.メーサーイ川では,洪水流量の約8割がミャンマー側に源を持つ越境的水源構造による情報遮断,ヒ素汚染等の複合災害リスク,文化的背景に起因する情報共有の困難さが複合した多層的障壁が確認された. GFは,①異質な知識の同一場への持ち込み,②中立的な場の設計,③リアルタイム可視化のフィードバック,という3条件が揃うことで,参加者自身が障壁を言語化・可視化する境界対象として機能することが示された.本研究の知見は,流域治水の社会実装に向けた参画プロセス設計の国際的な知識基盤として活用できる.
