講演情報
[OS-04-03]水災害による貧困固定化と格差拡大:東南アジア洪水常襲地帯における世帯調査に基づく実証分析
*川崎 昭如1 (1. 東京大学未来ビジョン研究センター)
キーワード:
度重なる洪水、貧困、格差、東南アジア、水災害リスク
水災害は生命・財産の喪失に直結するだけでなく、貧困の固定化や格差の拡大、教育・健康などの人的資本の蓄積を阻害し、人々の暮らしを長期的に脅かす。その影響は均一ではなく、脆弱な層ほど被害が大きく、回復も遅い。とりわけ資産や社会関係資本に乏しい人々は、同規模の災害でも回復が遅れ、結果として貧困と格差の拡大を招くことが指摘されている。近年、気候変動等の影響により、世界的に水災害の発生件数は増加傾向にあり、それに伴い経済的損失も拡大している。このような状況のもと、水災害に対する評価の視座が、従来の「被害額」中心から「生活機会や社会経済活動の回復」へと転換する潮流が強まっている。すなわち、住居損壊、道路冠水、農地被害、資産喪失といった水災害による直接的な被害にとどまらず、それらがもたらす格差の拡大や世代間の貧困固定化など中長期的な社会経済への波及効果を明らかにし、新たな計測・評価手法を開拓することが不可欠である。そこで筆者らは、「水災害は直接的な被害を引き起こすだけでなく、とりわけ下位中所得国・低所得国においては、社会経済的不平等を拡大させる要因にもなりうる」と考えている。そして、「気候適応策として適切な治水投資を行うことは、被害軽減に加え、格差是正や社会レジリエンスの強化にも資する可能性がある」という仮説のもと、研究開発を重ねてきた。本発表では、東南アジアにおける洪水を対象に、現地調査に基づき、洪水が貧困および経済格差に与える影響の実証的分析の結果を紹介する。
