講演情報
[OS-04-04]気候変動影響を考慮した全球将来人口分布推計と極端気象リスク評価への応用
*佐野 太一1、瀬谷 創1、沖 大幹2 (1. 神戸大学 大学院工学研究科、2. 東京大学 大学院工学系研究科)
キーワード:
将来人口分布推計、気候変動影響、気候リスク、重力モデル、曝露人口評価
気候変動影響評価において、将来人口分布は洪水、渇水、熱波、極端降水などの気候リスクに曝露される人口を推計するための基盤情報である。既往研究では、SSPに基づく国別人口シナリオを空間配分した将来人口分布が広く用いられてきた。しかし、これらの推計では、気候変動や環境条件の変化が人口分布そのものに与える影響は十分に考慮されていない。一方で、水資源量、農業生産性、干ばつ、高温ストレス、暑熱や寒冷に起因する健康影響などは、地域の居住環境や人口移動に影響しうる。本研究では、SSPに基づく国別将来人口を制約条件としつつ、気候、水資源条件を考慮して国内の人口変化をグリッドへ配分する全球将来人口分布推計手法を構築した。過去の人口分布にはGHS-POPを用い、将来の国別人口にはIIASA/WICによるSSP別国別人口データを用いた。人口配分モデルとして、コンスタントシェアモデル、通常の重力モデル、および平均降水量、河川流量、干ばつ指標、主要穀物収量、暑熱、寒冷関連死亡リスクを組み込んだ気候変動考慮重力モデルを比較した。モデルのパラメータは、過去の人口分布変化を用いて推定し、観測人口分布との適合度により評価した。その結果、気候、水資源条件を考慮した重力モデルは、他のモデルよりも過去の人口分布変化をよく再現した。推定されたパラメータから、河川流量や農業生産性が高い地域では人口が集積しやすく、干ばつや暑熱、寒冷関連死亡リスクが高い地域では人口増加が抑制される傾向が示された。さらに、得られた将来人口分布を極端気象リスク評価へ応用し、Sano and Oki (2022) で提案された気候リスク境界を逸脱する人口を再評価した。気候リスク境界は、人類が居住してきた地域で経験された極端高温および極端降水の範囲として定義される。その結果、逸脱地域そのものは大きく変化しない一方で、居住人口が変化するため、未曾有の極端気象リスクに曝露される人口は大きく変化した。特に、高排出シナリオでは、従来の人口分布を用いた場合に将来人口の33.2%が気候リスク境界を逸脱するのに対し、気候変動影響を考慮した人口分布を用いた場合には28.9%となり、逸脱人口は約13%減少した。以上より、気候リスク評価において、将来人口分布を外生条件として固定せず、気候、水文環境と相互に関係する要素として扱う必要性が示された。
