講演情報

[OS-05-01]水インフラをケアから考える:人-水関係の超学際研究に向けて

*難波 美芸1 (1. 千葉大学 人文科学研究院)
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キーワード:

ケア、文化人類学、インフラストラクチャー、ラオス、環境化

本発表は、水に関する超学際研究の深化に向けて、人類学の立場から人間―水関係を「ケア」という視点から考察する。ここでいうケアとは、人間同士の支援や配慮に限定されず、水、土、植物、動物、インフラ、制度、記憶を含む関係を維持し、調整し、時に組み替える実践である。近年、水害や防災の研究においても、避難や防災施策をケアの観点から捉え直す試みが見られるが、その焦点はしばしば人間同士の関係に置かれてきた。これに対して本発表では、ポストヒューマン人類学やマルチスピーシーズ研究以降のケア論を踏まえ、ケアを人間と非人間を含む関係世界を記述する概念として位置づける。そのための手がかりとして、本発表は近年のインフラ論における “environing” の視点に注目する。環境を既存の背景としてではなく、人間と非人間、技術と自然が相互に関与しながら作り出していく過程として捉えるならば、インフラは単に環境のなかに設置される構造物ではなく、環境そのものを定義し直し、作り替える媒体である。水インフラもまた、洪水を防ぐ、排水する、水を供給するという技術的機能だけでなく、水辺とは何か、川と都市はいかに関係するのか、人びとがどこで暮らし、移動し、耕し、儀礼を行うのかを再編する。本発表では、ラオス・ヴィエンチャンのメコン川沿いにおける護岸整備と水辺利用の事例を取り上げる。コンクリート堤防や堤防道路の整備は、川との距離、都市景観、土地利用を再編する一方で、人びとは浸水する堤外地の利用、補修、季節的な水辺利用などを通じて、水との関係を維持し続けている。この事例を通じて、水インフラをめぐるケアとは、技術の機能評価にとどまらず、インフラによって維持され、断たれ、作り替えられる人間―水―環境関係を問う視点であることを示す。