講演情報
[OS-05-02]全球水安全保障におけるジェンダー不平等:水ストレス・水アクセスと人口構造の時空間統合分析
*柿沼 薫1、和田 義英2 (1. 東北大学、2. アブドラ王立科学技術大学)
キーワード:
水安全保障、人口構造、水アクセス、水ストレス、ジェンダー
安全な水へのアクセスはSDG 6の中核をなすが,世界では依然として多くの人々が基本的な飲料水サービスを受けられない。この負担は女性に不均等に集中しているとされるが,水安全保障におけるジェンダー差を全球規模で定量化した研究は限られている。年齢・性別・居住地によって,同じ水文環境でも影響を受けやすい集団は異なり,人口構造を考慮した水資源評価が求められている。本発表では,Kakinuma and Wada(2024, Environmental Research Letters)で報告した研究成果に基づき,全球水安全保障評価に人口構造を統合する意義を議論する。同研究では,水ストレス,水アクセス,WorldPopによる年齢・性別別人口データを約10 km空間解像度で統合し,2000〜2014年を対象に解析を行った。水アクセス率が40%未満の地域を水アクセス不足地域,水需要量と水利用可能量の比が40%を超える地域を高水ストレス地域とし,両条件が重なる地域を水脆弱環境として評価した。さらに,MICSに基づく各国の水汲み主体の情報を用い,水脆弱環境に居住する人口の性差と水汲み負担の性差との関係を検討した。解析の結果,子どもでは水アクセス不足地域における性差は比較的小さい一方,15〜49歳の労働年齢人口では,アフリカを中心に女性が男性より多く水アクセス不足地域に居住していた。水脆弱環境では,アフリカ全体で労働年齢女性が男性より平均4.4%多く分布しており,ブルキナファソ・トーゴ・ソマリアなどでは女性の割合が特に高く,水汲みも主に女性が担っていた。この背景には,就労機会を求めた労働年齢男性の都市部への移動により,農村部に女性が多く残留するという人口移動パターンが関与していると考えられる。一方,アジアの一部では男性が水脆弱環境に多く分布する地域も確認され,水汲み主体にも地域差がみられた。したがって,水安全保障におけるジェンダー差は一様ではなく,地域ごとの人口構造・人口移動・社会的役割によって異なることが示唆された。本研究は,水資源情報に年齢・性別別の人口構造を統合することで,集計的な評価では捉えられなかった水安全保障のジェンダー格差を全球規模で定量化した。気候変動下で水ストレスが強まる中,SDG 5とSDG 6の同時達成には,人口移動や年齢構造を考慮した社会水文学的アプローチが重要になる。
