講演情報

[OS-07-02]水の蒸発メカニズム再考
—樹冠遮断蒸発は既存理論の限界を浮き彫りにしている—

*村上 茂樹1 (1. 森林総合研究所 九州支所)
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キーワード:

樹冠遮断蒸発、水の蒸発、飛沫蒸発、蒸発力、生物ポンプ

スギ林(樹高約12m)の樹冠下の 3高度(1.0m、2.7m、4.3m)で林内雨を測定し、これと林外雨の差から樹冠遮断蒸発CIを算出した。また、林内の2高度(1.0m、4.3m)で相対湿度 RH と気温T を測定した。測定精度はT< 0.1°C、RH≤0.1%である。この結果に基づき、水蒸気輸送に対する水蒸気の鉛直勾配の寄与を評価し、水の蒸発メカニズムについて検討した。
 2つの降雨、2026年2月27日(降雨1、雨量24.7mm)および同年3月18日~19日(降雨2、21.0mm)について雨量とCIを30分ごとに解析した。降雨1では16:00~16:30の雨量2.8㎜に対し、高さ1.0m、2.7m、4.3mでのCIは1.1mm、0.6mm、0.4mmであり、1.0mと4.3mの間で0.7mmの蒸発が生じている。樹冠下でかつ降雨中の測定であるため、正味放射量と地中熱流量はいずれもゼロと仮定できる。高さ1.0mと4.3mのTはいずれも14.0°Cであり、この2高度間における顕熱フラックスはゼロとなる。RHは98.5%と98.4%で、測定誤差を考慮すると潜熱フラックスもゼロとなる。ところが、これはCIの測定に基づく0.7mm/30min(951 W/m2)の蒸発と矛盾する。
 降雨2では19:30~20:00の雨量3.1mmに対し、高さ1.0m、2.7m、4.3mでのCIが1.4mm、0.7mm、0.3mmであり、1.0mと4.3mの間で1.1mmの蒸発が生じている。高さ1.0mと4.3mのTは15.8°Cと15.7°C 、RHは97.5%と98.7%、比湿qは10.84g/kgと10.86g/kgであった。高さ4.3mにおけるqは1.0mよりも大きいため水蒸気輸送は下向きとなるが、測定では上向きであり、両者は矛盾する。
 降雨1においては、熱収支ではゼロの水蒸気フラックスが測定では0.7mm/30minもあること、降雨2では水蒸気勾配から決まる水蒸気輸送の方向と実際の方向(CIの測定による)が逆であることから、水の蒸発に水蒸気勾配以外の駆動力が作用していると考えられる。すなわち、水の分子量が乾燥空気より小さいので水蒸気が上昇し、雲の形成による体積減少(水蒸気が固体、液体となる)が上昇流を起こすとするMakarieva仮説によって、説明が可能である。