講演情報
[OS-08-01]線状降水帯をもたらす大気の川の物理的特徴
*平賀 優介1、只木 想太1、田原 亮太郎1 (1. 東北大学大学院工学研究科)
キーワード:
大気河川、線状降水帯、降水効率
大気の川(Atmospheric Rivers; ARs)は,世界各地において大雨の主要な起因メカニズムであるが,「どのようなARが大雨を引き起こすのか」というAR側を起点とした特徴分析は十分に体系化されていない.本研究では,過去の長期再解析データから日本に上陸したARを体系的に抽出し,そのうち高い降水効率を示し,特に線状降水帯をもたらすARの物理的特徴を明らかにすることを目的とする.ERA5に基づく全球大気河川データベースtARget v4を活用し,1940年から2023年までの84年間において,夏季(6-8月)に日本に上陸した計1,775イベントのARを抽出した.特徴量には相対湿度RH,鉛直積算水蒸気輸送量IVT,可降水量PW,対流有効位置エネルギーCAPE,対流抑制エネルギーCIN,鉛直積算水蒸気フラックス収束MVIMC等を用いた.自己組織化マップ(SOM)によりARの経路を4クラスターに分類した結果,南西から本州を縦断する経路(Cluster D, 44.7%)が最も卓越した.また,太平洋高気圧の縁に沿って湾曲し,東北・北陸地方(北日本)へ強い水蒸気流入をもたらす経路(Cluster C, 17.6%)も特定された.また,北日本を対象に,IVTと降水量の回帰モデルから降水効率が高い群(上位20%)と低い群(下位20%)を比較した.その結果,降水効率が高いARは,MVIMCや中層のRHが有意に高く,CINが有意に低い特徴を示した.さらに,流入経路が南寄りで,標高の高い地形へと流入する事例ほど降水効率が高くなる傾向が認められた.また,線状降水帯を伴う事例と,同等の降水強度で伴わない事例を比較した結果,両群間でPWに有意な差が認められた.これは,線状降水帯のような組織化した降水帯の形成・維持には,多量の水蒸気が持続的に流入し続けることが重要であることを示唆している.これらの知見は,ARの物理的特徴や流入経路を正確に予測することが,大雨,特に線状降水帯の予測精度向上につながる可能性を示唆している.
