講演情報
[OS-10-04]中小規模流域における水循環の客観的評価に向けた課題整理
*井垣 智貴1、山崎 由理2、清水 克之2 (1. 鳥取大学大学院持続性社会創生科学研究科、2. 鳥取大学農学部)
キーワード:
流域管理、治水、利水、環境、水文観測
近年、気候変動や生物多様性の損失を背景に、利水・治水に加え、環境保全をも含めた「総合的な流域水管理」の重要性が高まっている。国内では、健全な水循環の維持・回復を目指して水循環基本法が制定され、同基本計画に基づく諸施策が推進されている。これに伴い、水循環の評価手法の検討が進められているが、現在主流となっているAHP(階層分析法)を用いた手法は主観的な判断に依存する側面が強い。その妥当性や政策効果を定量的に評価するためには、水量・水質・ハビタットなどの客観的指標に基づく検証が不可欠である。しかし、日本の河川流域は、その規模や河川区分によって観測体制やデータの蓄積状況が大きく異なる。特に中小規模流域では、客観的評価の実施に必要なデータが不足しているのが現状である。そこで本研究では、流域総合水管理の観点から「利水・治水・環境」の三要素に着目し、中小規模流域における水循環の客観的評価に向けた課題を整理することを目的とした。検討の結果、これら三要素は互いに制約し合う関係にあり、個別の評価にとどまらず、要素間の均衡(トレードオフ等)を踏まえた統合的な整理が必要であることを明らかにした。また、流域規模に応じて評価の容易性が異なる点も重要な論点である。中小規模流域では主観的評価が比較的実施しやすい一方、客観的評価を支える流量・水質データなどの観測データが乏しく、評価基盤の脆弱さが課題となっている。以上より、中小規模流域における水循環の客観的評価においては、データ不足を前提とした現実的な評価枠組みの検討が求められる。今後は、観測水準や利用可能なデータに応じて、直接観測すべき項目とモデル等で補完すべき項目を精査し、汎用性の高い評価フレームを構築する必要がある。
