講演情報

[OS-10-05]将来変化を踏まえた農業用ため池の管理・活用に関する市町村間比較

*渡部 哲史1、五三 裕太2 (1. 九州大学、2. 山梨大学)
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キーワード:

農業用ため池、気候変化、人口減少、水資源管理、持続可能性

農業用ため池は,我が国の稲作を支える水資源施設として古くから築造され,灌漑用水の供給に加えて,生物多様性の保全,水辺景観の形成,地域文化や共同作業の継承など,多面的な役割を果たしてきた.本研究では,全国の市町村を対象として,農業用ため池の水資源としての利用可能性と維持管理の持続可能性を比較し,気候変動と人口減少を踏まえた現在および将来の地域的特徴を明らかにすることを目的とした.分析には,農林水産省が公開する農業用ため池一覧を用い,2023年3月時点で登録された全国約15万箇所のため池について,位置情報,堤体長,堤高,貯水量等を整理した.市町村ごとの特徴を評価するため,ため池の総貯水量を10年確率渇水降水量と市町村面積で除した「ため池水資源利用性(RWA)」と,堤高の二乗と堤体長の積を人口で除した「維持管理困難性(DMD)」の二つの指標を設定した.また,現在気候の降水量にはAPHRO_JPを,将来降水量には日本域5 km解像度の大規模アンサンブル気候実験データを用い,将来人口はコーホート要因法により推計した.分析の結果,RWAは瀬戸内海沿岸および北部九州で高く,ため池数の多さと降水量の少なさを背景に,渇水時の水資源としての重要性が高いことが示された.一方,DMDは中国地方内陸部や東北地方内陸部で高く,人口密度の低さにより維持管理負担が相対的に大きいことが示唆された.また,四国や近畿の太平洋側でも,急峻な地形に伴う堤高の高いため池の存在により,維持管理困難性が高い地域が認められた.RWAとDMDの関係には全体として正の相関が見られたが,地域ごとの位置づけは異なり,同じため池の多い西日本でも,中国地方や四国では近畿や九州に比べて維持管理上の課題が大きい傾向が確認された.将来推計では,多くの地域でRWAが上昇し,渇水時降水量の減少によりため池の水資源としての重要性が高まる可能性が示された.同時に,人口減少に伴いDMDも全国的に上昇し,維持管理の困難化が広範に進むことが明らかとなった.本研究は,ため池の問題が従来認識されてきた西日本に限定されず,全国的な水資源管理および地域維持の課題として顕在化しうることを示すものである.