講演情報
[OS-11-01]土壌放射伝達モデルにおける鉛直不均質性とcoherent/incoherent近似の影響評価
*辻本 久美子1、太田 哲2、開發 一郎3 (1. 岡山大学、2. 研究技術開発支援機構、3. 広島大学)
キーワード:
土壌水分、放射伝達モデル、マイクロ波放射計、誘電率、衛星リモートセンシング
本研究は,土壌放射伝達モデル(RTM)における鉛直不均質性およびcoherent/incoherent近似の影響を評価することを目的とする。従来の土壌水分推定では,輝度温度を有効放射温度として表現し,各層からの放射寄与をエネルギーとして加算するincoherent近似が広く用いられてきた。しかし,強い鉛直水分勾配が存在する場合,誘電率の急変化により層間反射や多重反射が生じ,単純な減衰モデルでは表現が不十分となる可能性がある。そこで本研究では,既存のincoherentモデルに加え,層内伝播および多重反射に伴う位相変化を保持した準coherentモデルを構築した。実験区画で取得した土壌鉛直プロファイルを用い,Lバンド(1.4 GHz)およびCバンド(6.9 GHz)における輝度温度を計算し,両モデルの結果を比較した。その結果,従来の理解と整合的にLバンドは深部寄与を強く受ける一方で,coherentモデルではCバンドにおいても鉛直プロファイルの影響が顕著に現れる場合が確認された。これは,表層乾燥に伴う誘電率コントラストの増大により層間反射が強まり,多重反射と位相効果によって特定層の寄与が強調されるためと解釈される。以上より,「低周波ほど深部感度が高い」という従来の理解は,強い鉛直不均質条件下では必ずしも成立しない可能性が示唆された。本研究は,土壌放射特性の理解および衛星データ解釈に新たな視点を提供するものであり,今後は観測データとの比較によりcoherent効果の支配条件を定量的に評価する必要がある。
