講演情報
[PS-02-14]給水・発電・環境流量を統合した
Kafue 川流域における多目的最適化フレームワークの構築
*藪 和史1、梶山 青春2、花崎 直太3、鼎 信次郎4 (1. 東京科学大学 環境・社会理工学院 融合理工学系、2. 韓国科学技術院、3. 国立環境研究所 気候変動適応センター、4. 東京科学大学 環境・社会理工学院 土木工学系)
キーワード:
多目的最適化、パレートフロンティア、水力発電、都市給水、カフエ川
ザンビア共和国では2023/24年のEl Niño由来の干ばつにより,水力発電量が設計容量の3〜4割まで低下し,ルサカ市では1日最大20時間以上の計画停電とこれに伴う給水量低下が生じ,水・エネルギー複合危機が顕在化した.既往の流域最適化研究は発電と環境流量を主軸とし,下流都市への給水を統合的に扱った事例は限られている.また,Kafue Gorge Lower(2021年運用開始)を含む現行3ダム構成下での多目的評価も未だ整備されていない.本研究では,Kafue川の3つの水力発電ダム(Itezhi-Tezhi,Kafue Gorge Upper,Kafue Gorge Lower)とルサカ市給水を含む都市水システムを対象に,貯水池操作に対する多目的Pareto最適化フレームワークを構築した.給水充足率,年水力発電量,発電安定性,年間基底流量達成率,3月の季節増水流量達成率の5目的を設定し,5つの操作方針(現行rule curve追従,発電優先,給水優先,生態系優先,積極放流)を各10通りのパラメータと2水準のNRW(無収水率)水準と組み合わせ計100ケースを物理ベース計算で評価した.水文モデルH08をKafue Hook Bridgeで較正(NSE = 0.726)・検証(NSE = 0.714)したうえで,観測放流量・水位から逆算したITT流入時系列を入力として,各操作則による放流,Kafue Flats湿地伝播,3ダムの発電量,Iolanda取水量を逐次計算した.その結果,操作則方針が5目的の間に明瞭なトレードオフを生み,5目的のバランスが最も取れた解はS2(給水優先)から得られた(バランススコア4.51).また,NRW削減55%→35%の需要側介入は給水充足率のみを0.904から1.000に押し上げ,他の4目的には影響を与えないことから,供給側操作則と需要側介入が補完的役割を持つことが示唆された.本研究の意義は,ルサカ給水を陽に組み込み貯水池操作と無収水削減を統合的に扱った点,およびKafue Gorge Lowerを含む現行3ダム構成下で多目的Pareto評価を実施した点にある.
