講演情報

[PS-02-39]立地選択モデルを用いた人口減少下における防災集団移転促進事業の動学的費用便益分析

*﨑山 賢人1、田中 智大2、市川 温3 (1. 中央復建コンサルタンツ株式会社、2. 京都大学防災研究所、3. 京都大学大学院経営管理研究部)
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キーワード:

エージェントベースモデル、費用便益分析、人口動態、集団移転、洪水リスク

流域治水の推進に伴い,洪水リスクの高い区域から住民の居住地移転を促す防災集団移転促進事業が,非構造的対策の一つとして注目されている.既往研究では,移転前と事業完了時点における被害額の差を年平均被害軽減期待額として算定し,その効果が評価期間を通じて一定に持続すると仮定する静学的評価が主流であった.しかし,実際の防災集団移転促進事業では,住民の移転は一時点で完了するものではなく,長期にわたり段階的に進行する.また,わが国では今後,人口減少が同時に進展することから,将来の人口・資産分布の変化が洪水被害額や事業効果に影響を及ぼすと考えられる.そのため,防災集団移転促進事業の効果を評価する際には,年次ごとの便益の形成過程を時間軸上で捉えることが重要である. 本研究では,住民の立地選択行動および住宅市場の変化を内生的に表現するエージェント型立地選択モデルに,実態に即した防災集団移転促進事業の過程を組み込み,移転過程と人口減少を考慮した動学的費用便益分析を行った.その結果,防災集団移転による便益は事業開始直後から一括して発現するのではなく,移転の進行に応じて時間とともに段階的に形成されることが示された.このことから,事業完了時点の被害軽減効果を評価期間全体に適用する従来の静学的評価では,防災集団移転促進事業の効果を十分に捉えられない可能性があることを明らかにした.さらに,本手法により,人口減少に伴う被害額の自然減少分と,防災集団移転政策による追加的な被害削減分を区別して評価できることを示した.