講演情報

[PS-02-48]遮断蒸発モデルの仮定が流出予測に及ぼす影響

*籾山 寛樹1、熊谷 朝臣2、藤目 直也3、江草 智弘4、清水 貴範1 (1. 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所、2. 東京大学大学院 農学生命科学研究科、3. アジア航測株式会社、4. 静岡大学 農学部)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

森林、評価手法、洪水、蒸発散、水文モデル

日本の国土の約7割を占める森林においては、降水の2割以上が遮断蒸発となることも多く、遮断蒸発の予測は流域管理上重要である。プロセスベースのモデルとして広く利用されている遮断蒸発モデルは、植生による一時貯留という形で遮断蒸発を捉えている(以下貯留型とする)。その一方、森林で遮断蒸発を計測する場合には、植生の水貯留量ではなく、遮断蒸発量そのものが得られる。そのため、森林管理による遮断蒸発の変化を推定する場合にも、降水量に対する遮断蒸発量の比(総遮断率)を推測するモデルが用いられる場合もある。この場合、総遮断率を降水量に乗じて遮断蒸発を計算することになる(以下比例型とする)。貯留型と比例型との差は特に豪雨時に大きくなるものの、この違いが流出予測に及ぼす影響はほとんど調べられていない。そこで本研究では、遮断蒸発モデルの仮定が流出予測に及ぼす影響を評価し、遮断蒸発の計算方法について検討した。検討にあたってはまず、貯留型と比例型を両方表すことができる遮断蒸発モデルを開発した。次に、このモデルを利用して得られた計算値を、大洞沢流域(神奈川県清川村)内の針葉樹人工林プロットにおける遮断蒸発観測値と比較した。そして、過去に大洞沢流域へ適用した流出モデルに組み込み、遮断蒸発モデルの仮定の違いが大洞沢流域での流出予測に及ぼす影響を調べた。 貯留型のモデルは比例型と比べて、特に降水強度が大きくなる時期に遮断蒸発を過小評価する傾向が見られた。流出量に基づいて評価した場合にも、最適パラメータは遮断蒸発モデルが比例型となる場合に得られ、貯留型のモデルでは表現されていないプロセスの存在が示唆された。その一方、特に洪水重視の評価指標を用いた場合は、遮断蒸発モデルの仮定にかかわらず高い評価値が得られており、遮断蒸発の仮定による差が流出モデルのパラメータの変化によって相殺される、というequifinalityが見られた。そして、遮断蒸発モデルが貯留型か比例型かによる違いは、洪水時にのみ大きく表れた。豪雨時の遮断蒸発メカニズムについては未だ解明されていない点が多いものの、降水量と遮断蒸発量の関係がより正確に分かるようになれば、洪水予測のさらなる改良につながる可能性がある。