講演情報
[PS-02-53]高速版陸面過程モデルによる大規模アンサンブルを用いたコロラド川流域における流量感度係数の分析
*樋口 淳紀1、鼎 信次郎1 (1. 東京科学大学 環境・社会理工学院)
キーワード:
アンサンブルシミュレーション、コロラド川流域、エミュレータ、気温感度、降水感度
北米コロラド川上流域(UCRB)では気温上昇に伴う流量の長期的減少が観測されており,その定量的評価が求められている.流量変化は降水感度α(降水量1%変化あたりの流量変化率)と気温感度β(気温1℃上昇あたりの流量変化率)によって表されるが,βの推定値は回帰分析(−13〜−15 %/℃)とデルタ法(−2〜−9 %/℃)の間で大きく乖離することが知られている.Milly・Dunne(2020)は積雪アルベドフィードバックがこの乖離の主要因であることを示したが,α・βが時代によらず一定であるという仮定の検証は行われていない.本研究では,MATSIROをベースとした高速版陸面過程モデルエミュレータを用いて,1,000メンバーのパラメータアンサンブルシミュレーションを3つの10年時間窓(1985–1994,1995–2004,2005–2014)に対して実施した.各メンバーのRunoffをラグ付き線形リザーバーモデルにより月流量に変換し,観測流量とのNSEが高い上位メンバーを採択したうえで,重回帰分析によりα・βを推定した.採択メンバーのβの中央値は1985–1994年の−3.8 %/℃から2005–2014年の−27.4 %/℃へと負方向に増大する傾向を示し,近年において積雪アルベドフィードバックがより強く機能している可能性が示唆された.一方,αの推定値は既往研究と比較して著しく低く,エミュレータの降水応答の過小評価が課題として残った.本結果はUCRBにおけるα・βの非定常性の可能性を示唆しており,感度係数を一定と仮定した将来予測には注意が必要である.
