運営委員長 挨拶
2024年度農業農村工学会大会講演会の開催にあたり、大会運営委員会・実行委員会を代表して、ご挨拶を申し上げます。
まずは、本州北端に位置する青森県の弘前市にある弘前大学文京町キャンパスまでご来場いただいた多くの現地参加の皆様、そして諸事情から現地参加できずオンラインでご参加いただいた多くの皆様に、心よりお礼申し上げます。
一方、開催日程について当初8月下旬でご案内していたところ、水文・水資源学会2024年度研究発表会と開催日程が重複する9 月中旬に変更させていただくこととなり、関係の研究分野の方や、早々に交通機関や宿泊施設などの手配を進めていた方には、大変ご迷惑をお掛けすることとなりました。深くお詫び申し上げます。弘前市内での宿泊施設数・客室数があまり多くない状況で、8月下旬にある業界での恒例の全国規模イベントが開催されることが判明したため、やむなく変更させていただきました。
昨年度、愛媛県松山市で開催された大会では、コロナ禍中に中断していた交流会やバスによる現地研修会が復活し、コロナ禍以前の通常の大会運営に加えて、コロナ禍以降普及したオンライン配信を開会式から一般講演会について併用する運営方法でした。本大会でも昨年度の運営方法を踏襲し、対面とオンラインを併用するハイブリッド方式を採用させていただきました。しかしながら、このハイブリッド方式は、大会運営の手間を増大させるのみならず、運営経費もかさみます。そこで、大変心苦しい選択ではありましたが、大会参加費を値上げさせていただくこととなりました。より充実した大会運営のためですので、ご理解をいただきたいと思います。
さて、ご存じのように青森県において農業は基幹産業であり、令和3年度青森県食料自給率はカロリーベースで全国4位の120%、生産額ベースでは全国3位の240%です。令和4 年度青森県農業産出額は3,168億円の全国7位で、果実34%、畜産31%、野菜21%、米13%と様々な農産物がバランス良く生産されています。そしてこの農業を支えているのが農業農村工学です。江戸時代以降大規模な灌漑施設の整備や農地開発が行われ、世界かんがい施設遺産には、県西部津軽地方の土淵堰と県東部南部地方の稲生川が登録されています。青森県内には国営事業所・事務所が現在4つ存在しています。また、弘前大学農学生命科学部地域環境工学科では2005年度以降JABEE 認定を継続している農業土木コースを有し、この10年間学科卒業生(JABEE 修了生以外も含む)の70%以上は農業農村工学分野の公務員・民間企業に就職しています。一方で、少子高齢化の先進地でもあり、2023年の20~24歳の転出超過率は男女とも青森県が全国1位で、若年層の県外流出が顕著です。こうした状況下で未来の農村をどのように描いていけばよいのか、農業農村工学の研究成果には大いに期待したいところです。
こうしたことを踏まえ、大会運営委員会・実行委員会は、ご参加の皆様に青森県における農業農村工学の意義を体感していただけるように特別講演や現地研修会を企画すると同時に、農業農村工学の発展につながる活発な意見交換がなされる研究発表会となるように、精一杯努力させていただきます。今回、弘前大学・青森県で開催される大会が、ご参加の皆様にとって新たな見識を得る場、新たな人との出会いの場、あるいは既知の人との関係を深める場として、今後の皆様のご活躍と農業農村工学の発展につながる有意義な大会となることを心より願っています。
2024年9月
2024年度(第73回)農業農村工学会大会運営委員会委員長
藤﨑 浩幸(弘前大学農学生命科学部)