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[104]酸素流量計の流量精度点検における計測機器間の妥当性の統計学的評価

吉澤 光崇 (丸の内病院 臨床工学課)
【はじめに】酸素流量計の流量精度点検に関する報告は非常に少なく,標準的な方法についての議論も十分ではない.当院ではKOFLOC社製フロート式流量計RK1350を用いて酸素流量計の精度点検をおこなっているが,IMT社製フローアナライザ PF-300も麻酔器や呼吸器の点検に使用しており,その仕様上,酸素流量計の測定にも適用可能であると考えられる.フロート式流量計とフローアナライザの測定結果の精度評価は十分に検証されていない.本研究では,RK1350とPF-300を用いて,両計測機器間の測定値の妥当性を統計学的手法で評価することを目的とする.【方法】RK1350とPF-300を用い,大気圧式酸素流量計40本の流量を1~ 10L/minの範囲で1L/min刻みで測定した.測定値の妥当性を評価するために,「Linの一致相関係数」と「Bland-Altman法」を用いて統計解析をおこなった.【結果】Linの一致相関係数(95%信頼区間)は0.9514(0.9447 ~ 0.9573) とMcBrideの評価基準により2機種の測定は高い一致性が認められた(substantial).また2機種の対応する測定値をBland Altman Plotで評価し,差の平均値(95%信頼区間)は-0.9286(-0.9767 ~-0.8804)と加算誤差が認められ,差と平均の相関係数は-0.9926と比例誤差が存在した.変動係数(CV)はほぼ同等といえた.【考察】2機種の測定値間には高い相関が認められたが,加算誤差および比例誤差の影響が確認された.PF-300はRK1350より一貫して高い測定値を示し,流量が増加するにつれて2機種の測定値間の差が比例的に拡大する傾向が見られた.【結語】PF-300は酸素流量計の測定において一定の信頼性を有するものの,加算誤差や比例誤差の影響を考慮し,実務で測定値を適用する際には回帰式による補正が必要である.なお,フローアナライザには複数の機種が存在し,本研究の結果が他の機種にも適用可能であるとは限らない.