講演情報
[105]機器開発M&M:温風対流を可能とする体圧分散マットレスの開発と製品化における課題
渡邊 祐介1,2, 石田 稔1, 武田 芳明1, 青木 真理3, 野々村 琢人3 (1.北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構, 2.藤田医科大学先端ロボット・内視鏡手術学講座, 3.西川㈱日本睡眠科学研究所)
【背景】手術台マットレスには,体温管理,体圧分散といった機能が求められるが,単一製品での実現は難しく,体圧分散マットレスと体温管理デバイスの併用が一般的である.体温管理に使用されるブランケットタイプの温風式デバイスは,術式によって患者との接触面積が制約され,十分な加温効率を得ることが難しい場合がある.一方,アンダータイプでは患者の加重部で温風の対流が妨げられることが課題となる.また,温水式デバイスはコストやメンテナンスの負担が大きい.本研究では,これらの課題を克服し,体圧分散と体温管理を両立する新たな手術用マットレスの要求仕様を決定し,製品化に向けた開発課題を検討した.【方法】ウレタンフォーム製マットレスと温風式デバイスを用いた現行製品の課題分析に加え,SWOT分析と手術室スタッフのヒアリングを通じて,臨床現場での具体的なニーズを明確化した.臨床ニーズに基づく要求仕様を検討し,モックアップのコンセプト評価と製品化におけるリスク分析をおこなった.【結果】体圧加重部の温風対流を可能にする特殊立体構造を持つポリエステル製体圧分散マットレスを選定した.このマットレスは,体積の96%を空気層で構成し,汚染対策や洗濯耐性といった臨床ニーズを満たす特性を備えていた.次に,撥水性不織布製カバーを試作し,体圧加重部での温風対流を確認した.一方で,知財戦略,温風器のOEM供給,製造ライン整備,薬事対応といった開発リスクを特定した.また,近年の医療機関の財務逼迫化を踏まえると,実際の市場規模(SOM)の見積もりが困難であり,単独企業による製品パッケージ開発ではROI(投資収益率)の期待値低下を含むリスクが顕在化した.【結語】体圧分散機能と体温管理機能を統合した新たな手術用マットレスの技術的な実現可能性を確認した.しかし,開発リスクや市場性の課題を考慮し,現段階での製品化は断念することとなった.