講演情報

[106]移動式術野カメラの開発による手術映像記録の改善への取り組み

鈴木 克尚, 増井 浩史 (聖隷浜松病院 臨床工学室)
【はじめに】医療安全のため手術映像の記録を実施している.固定式術野カメラは18室中4室に設置して,緊急手術は固定カメラのある手術室でおこなう方針だが,手術件数が多く部屋が確保できないため,術野カメラでの撮影が実施できない場合があった.環境改善のため,エアーウォータ社と移動式術野カメラの開発支援をおこなった.【対象および方法】2023年4月に試作機である移動式術野カメラを導入した.操作方法の説明会を実施し,準備はCEが担当した.臨床評価とメーカとの改良点の検討をおこなった.【結果】手術記録システムは2023年度に230件(月平均19.2件)の使用実績があり,2024年度も月18.5件のペースを維持する.4Kカメラ導入により55インチディスプレイに高精細な術野映像を出力し,スタッフ間の情報共有が向上した.カメラのフォーカス・ズームおよび電動雲台の向き・角度調整をリモコンとタブレットで遠隔操作できる機能は好評を得た.タブレットと電子カルテの混信は周波数帯の変更で対応した.音声機能の追加は映像だけでは判断しづらい情報の振り返りが容易になった.滅菌ドレープの開発は,術者自身によるアーム操作が可能となり,外回りスタッフの負担軽減と術野の清潔度向上を実現した.一方,電源喪失時の記録欠落,CE以外のスタッフによる片付け時のアーム故障,正規のシャットダウン手順不遵守によるシステムの不安定化といった課題も発生し,無停電装置を加えたシステムプログラムの改良を実施した.【考察】移動式術野カメラの導入により,緊急手術への柔軟な対応が可能となった.4K高精細映像による術野の明瞭な視認性は,手術チームの情報共有と医療安全の向上に貢献している.遠隔操作や滅菌ドレープなど,現場ニーズに即した改良から業務効率化を実現してきた.臨床現場での評価や提案を基に,より実用的なシステムへと進化を遂げており,今後も安全で効率的な手術環境の実現に向けて貢献していきたい.