講演情報
[11]高圧蒸気滅菌装置トラブルを契機とした手術運営体制の再構築と機器管理の重要性
津川 大吾1, 木村 博子1, 辻 奈美子1, 花房 陽子1, 宮田 妙子2 (1.医療法人社団松下会白庭病院 看護部, 2.医療法人社団松下会白庭病院 麻酔科)
【はじめに】医療現場における高圧蒸気滅菌装置のトラブルは,医療器材の安全性と有効性に直結する重要な課題である.これまで当院では中材室の管理を主に看護助手が担当しており,滅菌技士の資格を持つスタッフはいたが,包括的な管理体制は整備されていなかった.現在は滅菌に精通した看護師が管理をおこない,その提言を契機に,臨床工学技士が手術室と中材室の機器管理を担う体制が構築された.【経緯】当院の高圧蒸気滅菌装置は導入から15年以上経過しており,昨年末,エア漏れによる空気圧不足が原因で運転不能となった.一時的な修理で稼働を再開したが,完全復旧には約1ヶ月を要し,その間,装置が停止するリスクを無視できないため,中古パーツを手配し,応急的に装置の安定を図った.また,装置が完全停止した場合に備え,手術中止を回避するための運営体制を構築した.この事例を通して手術運営体制の再構築と,機器管理の重要性を再認識したので報告する.【方法】滅菌を専門業者へ委託,近隣で対応可能な業者のリストを整備した.事務部門と連携し,依頼手順や業者の対応リソースを確認し,緊急時でも迅速に対応できる協力体制を整えた.また,トラブル発生から手術再開までを迅速におこなえるよう,手順をフローチャート化し,受け入れ困難となる状況や手術,および実施可能な手術件数を明確化した.【結果】通常時と比較し人工関節手術はおよそ67%,脊椎手術75%,眼科手術75%程度の運営能力を維持し,装置停止時でも手術を継続可能な基盤を確立した.【考察】今回の経緯から手術運営の再構築を進めたが,この過程で明らかになったのは,滅菌装置の停止リスクが手術運営に与える影響の大きさと,院内管理体制の再評価である.特に,滅菌装置の経年劣化に対する計画的な更新がおこなわれていなかったことが,トラブル対応を難しくした一因である.今後の課題として,装置の計画更新や管理体制の強化,フローチャート運用の確立を目指す.